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INTENSIVIST Vol.12 No.1 2020 (特集:生理学)を編集しました


今さら生理学??と思うかも知れませんが、臨床を知っている執筆陣に生理学的な観点から見直して頂いたので、実践的な内容となっています。CQは多数ありますが、現在どこまでわかっているかを突き詰めて頂きました。


私は少し手伝っただけでしたがそれでも編集作業はとても大変でした。この作業が 雑誌:INTENSIVISTの質を支えているのだと痛感しました。

編集するにあたって自分が十分な理解をできていない部分も明確になりました。私がReviewしたのは一部分だけだったので、読者としても出来上がりを楽しみにしていました。

毎週何かトリビアを言うのが私のDutyとなっていますので、しばらくこれを読み込んでトリビア探しをしようかと思っています。


なお、私は「なぜ体温が上昇すると酸素飽和度が低下するのか? 」の執筆も担当しました。偽性低酸素血症、飽和水蒸気圧の変化、酸素消費量増大、肺胞低換気、換気血流比不均衡、拡散障害、右ー左シャント、酸素解離曲線右方偏位の観点から可能な限り解説を行いました。

結論としては酸素消費量増大、換気血流比不均衡、拡散障害といった要素が関与するため、肺気腫のある高齢者で起こり易いと考えられます。また酸素解離曲線偏位の最大要因は温度ではなくpHですので、SpO2が不釣り合いに低下するのはアシデミアが存在するような敗血症の時です(2,3DPGやCO2の影響はそれ以下)。


個人的には運動時の低酸素血症( Exercise-induced arterial hypoxemia(EIAH) )のデータが勉強になりました。 運動強度が低い場合は換気障害がメインですが、 運動強度が高いとAaDO2開大がメインの機序であるというのです。軽い運動で過換気とならないように換気を抑える制御システムなんでしょうか・・。運動強度が高い場合のAaDO2開大には 拡散障害が関わっているようですが、CO2の拡散遅延が(PaCO2が正常であっても)Bohr効果を介して低酸素血症に関わるということは今まで考えたことがありませんでした。詳しく知りたい人は 以下の論文がおススメです。

Compr Physiol. 2013 Apr;3(2):693-739.


酸素解離曲線は大昔に近似式が知られていますが、最近になってその確かさが確認されました。よくこんな近似式を作れたものだと関心します。



また、話がずれるので掲載しませんでしたが、酸素運搬量はSaO2でほぼ決まり、PaO2はほとんど関係していないということが分かりやすい図を執筆時に見つけたので紹介しておきます。


一番上が血液で運べる酸素全体。ほとんど重なっているのがHbに結合している酸素。ほとんど底を這っているような線が血清中に溶け込んでいる酸素。


これが理解できると、シャント疾患や無気肺に酸素投与してもSpO2は改善しにくいが、肺気腫患者のHOTは少量酸素なのに良く効くことが理解できます(詳しくは院内レクチャー:血液ガスを見直して頂きたいですが、SpO2 60%とSpO2 100%を1:1で混ぜたらSpO2は80%ぐらいですが、PaO2 30(≒SpO2 60%)とPaO2 370(SpO2 100%)を1:1で混ぜてもPaO2は(30+370)÷2=200とはならず、PaO2 45(SpO2≒80)ぐらいにしかなりません)。




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