今回は2例の症例ディスカッションと、自然毒について講演しました。
なぜ自然毒か。この講演会のご依頼を頂いたのが1年ほど前でありました。当時はCOVIDをこれ以上広げないためにどうすべきかを皆考えており、まさかオリンピックを本当に行うとは思いも寄らなかった事でした。そのためオリンピックに伴うマスギャザリング感染症への杞憂もいささか薄れており、それよりはCOVID対策をするが故に、診断が遅れてしまう事例をどう減らせるかへの関心が高かったように思います。
当院は2020年2月に発熱外来を設置した時にはまだ京都に10か所もないCOVID疑いの診療機関でしたが、いまだに当時設置したプレハブにも満たないみすぼらしい場所で発熱外来をしています。我々もまさかこのような場所で1年以上診療するとは正直思っていなかったのですが、敷地の問題からなんともし難く今に至っています。この場所ではプライバシーへの配慮からSTDのリスク聴取は困難ですし、診察するベッドもありません。当初はこのような状況下で診断に遅れのあった症例を集めて、議論しようかとも思いましたが、意外なほど症例は集まりませんでした。COVIDの迅速検査が容易になったこと、インフルエンザが流行しなかったこと、皆がCOVID対応に慣れた事などが関係していると思われます。
私にはあと二つ杞憂がありました。一つはCOVIDによって職を失ったり、生活様式が変化し、ストレスが増えることで、機能性疾患が増えることです。これは様々な場所で議論されていることなので今回は触れません。
もう一つはアウトドアへの関心が高まることです。人との接触を避けながらも生活をエンジョイする手段としてアウトドア活動が注目されれば、あまり知識がない人が虫対策をせずに野外活動をしてリケッチア・恙虫病になったり、素人だけでキノコ狩りをしてキノコ中毒になるという可能性を考えたのです。魚介類などはお取り寄せグルメや、釣りをしても現地食することなく、自宅で自分で料理することも増えるのではないかと考えました。
ということで、前置きが長くなりましたが、当院でも自然毒レクチャーを昨年度行いました。結果としては、COVIDと関連するかは定かではありませんが、パリトキシン様毒素食中毒は経験致しました。それ以外は昨年度は経験しませんでしが、いつかは出会う可能性があるものばかりですので、これらをテーマに講演させて頂きました。
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