今月の「総合診療」への連載のテーマです。
アルコールにはADH分泌抑制を介して利尿効果がありますので、運動後など脱水があったり、入浴など低血圧が問題となる状況での飲酒には注意が必要です。特にアルコール度数の高いお酒を摂取すると脱水を引き起こすことがあります(低濃度あるいは少量では問題ないという報告がありますが、日本人での適正な量は不明)。
その一方で飲酒によりむくむ事もあります。大酒家では肝臓や心臓が悪くなったり、栄養の偏りがあると(ビタミンB1欠乏症)むくむ事がありますのが、それよりも沢山飲みすぎた次の日の朝に眼瞼がむくむという経験のある人が多いでしょう。
これは様々な要因によりアルコールによる利尿が阻害されることが一つの理由です。
そして時間差で起こる他の要因が加わり、翌朝の眼瞼浮腫が出現すると考えられます。
つまり、アルコールの利尿作用は限定的なため、塩分摂取量が多く、その後泥酔(ADH分泌促進)した場合には、翌朝に浮腫が生じやすいという訳ですね。
テーマとしてはシンプルでしたが、エタノール48gを一気に服用させて利尿効果を確認したり、自由水を摂取させた後はADHが抑制されており利尿効果がなくなることを確認したり、逆に高張食塩水負荷も飲酒より先行した場合はADHがすでに分泌されてしまっているのでやはり利尿効果がなくなること、大腿を駆血しても有効循環血漿量が減少するので利尿効果が得られないこと、アルコール血中濃度を2時間以上高値に保つと利尿効果がなくなることなど、様々な研究が行われていることを今回知りました。参考となる論文を以下に記します
1. RUBINI ME, KLEEMAN CR, LAMDIN E. Studies on alcohol diuresis. I. The effect of ethyl alcohol ingestion on water, electrolyte and acid-base metabolism. J Clin Invest. 1955;34(3):439-447. PMID: 14354014
2. Eggleton MG. The diuretic action of alcohol in man. J Physiol. 1942;101(2):172-191.
3. Polhuis KCMM, Wijnen AHC, Sierksma A, et al. The diuretic action of weak and strong alcoholic beverages in elderly men: A randomized diet-controlled crossover trial. Nutrients. 2017;9(7). PMID: 28657601
4. KLEEMAN CR, RUBINI ME, LAMDIN E, et al. Studies on alcohol diuresis. II. The evaluation of ethyl alcohol as an inhibitor of the neurohypophysis. J Clin Invest. 1955;34(3):448-455. PMID: 14354015
5. Doggett TM, Breslin JW. Acute Alcohol Intoxication-Induced Microvascular Leakage. Alcohol Clin Exp Res. 2014;38(9):2414-2426. PMID: 25257290
: 25257290
Comentarios