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この薬、空腹時に飲んではダメですか?

総合診療の連載「Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?」。10月号は「この薬、空腹時に飲んではダメですか?」です。

前号に引き続き、服薬指導に関連する内容ですが、夜な夜な添付文書を調べつくすという作業をして書き上げました。私としては執筆を介してとても勉強になりました。内容を一言でまとめれば「添付文書をちゃんと見てね」ということになりますが、それでは元も子もないので、重要と思われる点をかいつまんで紹介致します。



アセトアミノフェンは空腹時しかダメ?

このテーマのきっかけとなったのは、薬局からの「空腹時は避けてください」という指導をしっかりと守るために服薬できず、咽頭炎による咽頭痛が軽快せず、ついに飲水も困難となり脱水症を来した症例があったからです。アセトアミノフェンを(空腹ではあるが)しっかりと服用させたところ、経口摂取が可能となりました。


急性疾患罹患時は経口摂取量が低下しますので、解熱鎮痛剤を「空腹時は避ける」と画一的に指導するのは良くありません。アセトアミノフェンは空腹時投与でも胃腸障害や肝障害のリスクは低いとされています。


リン吸着薬

ビキサロマー、セベラマー、スクロオキシ水酸化鉄は食事中のリン吸着のため、食直前投与です。一方、沈降炭酸カルシウム、炭酸ランタン、クエン酸第二鉄は食直後投与です。この違いはなんでしょうか?

炭酸ランタンは嘔気が高頻度のため、食直後投与となった経緯があります。一方、FDAでは食事中~食直後となっており、嘔気さえなければタイミングを速めても良いでしょう。

食直前投与の薬剤は他の薬剤吸収を阻害しないようにという配慮からです。

FDAではセベラマー、クエン酸第二鉄、スクロオキシ水酸化鉄は「食事と一緒に」という緩い縛りしかありません。

例えば食直後投与とされるクエン酸第二鉄ですが、αグルコシダーゼ阻害薬と食直前投与に統一すればアドヒアランスが向上するような場合は、許容しうる変更と思います。


クラブラン酸は食前が望ましい

AMPC/CVAであるクラバモックス🄬は食直前投与です。食後ではクラブラン酸(CVA)の吸収率が低下するためです。CVAの含有比率が高いオーグメンチン🄬にはこの縛りがありません。しかし、サワシリン🄬・オーグメンチン🄬というしばしば使われる併用療法の場合は、高用量のAMPCとCVAを必要としている状態であり、今一度、吸収率について考慮したほうがよいかも知れません。

漢方は食後でもよい

漢方薬は食前もしくは食間投与と記載されています。漢方薬に含まれるアルカロイドは酸性環境下で吸収が低下しますので、胃酸が中和された食後に投与すると麻黄や附子の副作用がでやすいと考えられるからです。しかしPPIによる胃酸抑制が問題となることはないことからも推測されるように、この影響は微々たるもののようです。漢方専門外来でも食後投与とされている事のほうが多いという報告があり、私も食後投与とすることが多いです。

リファンピシンは朝食前空腹時?

「原則として朝食前空腹時投与」と添付文書に書かれています。しかしアドヒアランスに問題が生じうることが問題です。最近の総説によると吸収率に一定の傾向はなく食後でも良いと考えられましたが、空腹時の方が個体間差・個体内差が少ないということが示されており、「朝食前空腹時投与が望ましいが、アドヒアランスが低下するぐらいならいつ投与してもよい」と解釈されます。



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