献本頂いたり、書評をお願いされることはありましたが、帯に自分の推薦文が載るのは初めてでした。私は論文と数字をこよなく愛していますが、文章力に恵まれているとはとても言えず、論文も数字も用いることのない文章を書くのは今までにないプレッシャーを感じましたが、この書籍の素晴らしさを伝える一助となれたならば大変嬉しく思います。
多疾患罹患の管理を劇的に改善させる「慢性臓器障害の診かた」
「慢性臓器障害」という聞きなれない用語に戸惑う必要はない。本書を特に薦めたい読者とは、1.総合診療とは何かがよく分からないという医師、2.総合診療を志す医師、3.総合診療医と接する機会のある臓器別専門医、4.臓器別専門医であるが臓器を問わずコモンな慢性疾患を幅広く診療する医師(開業医、小病院勤務医)だ。少なくても1~4のいずれかに当てはまるならば、本書を紐解くだけの価値を感じ取れるはずだ。
総合診療医とは診断困難症例に立ち向かうスーパードクターだけを指すわけではない。外科医が皆、ブラックジャックではないのと同じだ。地域を愛し眼の前の患者さんに自らできる事は何かを悩み抜いた筆者が導き出した総合診療医の姿~特定の疾患・臓器に特化せず、特定の患者集団を長期的・継続的に見続ける医師~は現在最も必要とされている専門医の姿そのものかも知れない。総合診療医とはどんなエキスパートであるかを教えてくれる本書は、総合診療を志す医師にとって力強いエールとなるだろう。また、総合診療医との連携を図る専門医に読んで頂ければ、総合診療医との望ましい協働の在り方が分かるだろう。
既存の縦割りの研修では得られる事がなかった考え方「慢性臓器障害」が生まれたのは、研修指導に実直に取り組んできた筆者にとっては必然だったのかも知れない。研修医が縦割りで培った知識で一生懸命取り繕っても、横糸がない限り患者を掬い上げることは困難な症例を何度も目の当たりにしたのだろう。多疾患罹患のある高齢者の管理は大変難しく、bad endに終わることも珍しくはない。しかし、慢性臓器障害の考え方を持ち出すことにより、複雑に絡み合った頭の中のプロブレムリストを整理し、それぞれの疾患ステージに応じ力加減を調節することで、good practiceを生み出せるはずだ。読者の皆様には壮大な概念でありながら身近にも感じられる「慢性臓器障害」のみかた、考え方を堪能して頂きたい。
コメント