久しぶりに身体症状症について執筆いたしました。
非専門医ですが、主に内科疾患を扱う立場として、適切に専門医に紹介し早期に治療を受けられるように早期診断について執筆させて頂きました。
身体症状症の診断は除外診断ではありません。
器質的疾患に併存して良いことがDSM-5の診断基準からもわかります。
A 1つまたはそれ以上の、苦痛を伴う、または日常生活に意味のある混乱を引き起こす身体症状
B 身体症状、またはそれに伴う健康への懸念に関連した過度な思考、感情、または行動で、以下のうち少なくとも1つによって顕在化する
自分の症状の深刻さについての不釣り合いかつ持続する思考
健康または症状についての持続する強い不安
これらの症状または健康への懸念に費やされる過度の時間と労力
C 身体症状はどれ一つとして持続的に存在していないかもしれないが、症状のある状態は持続している(典型的には6か月以上)
器質的疾患の除外により初めて身体症状症(SSD)を疑うのはデメリットがあり薦められません。
器質的疾患が除外されるまで、SSDの診断がなされずに放置される。
器質的疾患にSSDが併存する病態ではSSDが診断されない。
器質的疾患が除外されない限り不要な検査や治療が行われるが、これらは症状緩和につながらないために不安を助長させる。
SSDでは無い症例を、器質的疾患の証拠がないからといってSSDと決めつけてしまう。
SSDを早期に疑うポイントとしては以下のような例があげられます
非特異的な全身症状(倦怠感)のみで臓器特異的な症状がなく、客観的な異常所見(体重減少、発熱など)がない。
全身症状、心肺症状、消化管症状、筋骨格系症状のうち3領域以上にまたがる症状
症状を過剰に捉えている場合(いつ症状が存在するかを明確に答えられないような軽微な症状であるにも関わらず、四六時中その事を気にしている場合など)
診察中にため息をつく
腹痛患者が腹部診察時に眼を閉じている
身体症状症は疼痛を伴うものも多いため、薬物療法ではSNRIを用いるのかと思えばそうではなく、詳細は本文に譲りますがSNRIやTCAは殆どエビデンスがなく、SSRIが薬物治療の中心となります。
認知行動療法は15件のRCTのメタ解析により有用性証明されています。
慢性疲労であれば、
ストレスフルな出来事・軽い疲労感
→ 何かおかしい(脅威としての認知)・今日も体が動かなくなる という不安感
→ 条件づけられた身体反応(疲労感・頭痛・めまい) ↑
→ 自分にはどうしようもない(強い確信) これが身体感覚の破局的誤解 ↑
という悪循環を断ち切らせることが治療の大筋です。
広義の認知行動療法としてアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)があります。
慢性疼痛に最も有効な可能性がある心理療法です。
心理的柔軟性を促進→言語によって増悪された逃避・回避行動を軽減(アクセプタンス)と適応的行動を生起・拡大(コミットメント)させます。
これは高齢者においても有用性が高いことが第二世代認知行動療法とは異なります。
アクセプタンス&コミットメント・セラピーについては、後日院内レクチャー予定です。
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