「患者情報がうまく伝わらない……」「専門医に動いてもらえない……」、そして、「コンサルトがうまくないためか、患者さんが良くならない……」、そのような歯がゆい思いをした臨床医は多いことでしょう。
治療経過にも大きく影響を及ぼすコンサルトは、最重要治療であり、単なる患者情報の伝達ではありません。しかし、このように重要なコンサルトの方法は、誰からも教えてもらうことはありません。
本書では、誰でも実践できるコンサルトの方法などを紹介します。第1章では、すべての診療科に使えるコンサルトスキルをSTEP方式で解説します。第2章では、救急現場の症例を挙げ、コンサルトの実践を学びます。STEP方式のコンサルトスキルを使い、「あの先生」にコンサルトしていきます。なお、各診療科のコンサルト先は、一流の臨床医で最高の教育者ばかりです。その先生方の頭の中も知ることができ、コンサルトの極意もわかります。第3章では、コンサルトのトラブルの対応を解説します。
コンサルトに関する知識や技術がすべて詰まった本書は、専門医につなぐことが多い若手医師や研修医、さらには彼らを指導・サポートする先生方にもオススメの1冊です。
当院からは総合内科へのコンサルトを想定して執筆させていただきました。
研修医時代には「救急でお世話になることが多い科にはとりあえずローテーションしておけ」と教わりました。それは、ローテーションしている科にはコンサルトが非常に行いやすくなるからです。一つは顔のみえる関係性構築という意味合いがあります。基本的に人が好きな医師が臨床医には多いためか(そうあるべきでもあります)、顔をしっている後輩には、どんなに不格好なコンサルトを行っても助けてくれるという先輩に私は恵まれてきました。私は内科医になると決めていましたが、研修医時代に心臓血管外科と脳神経外科もローテーションしました。彼らは私が全く違う分野に進むことを知りながら、コンサルトに笑顔で答えてくれたばかりではなく、その後の経過も教えてくれたり親切にしてくれました。
2点目はどの科(あるいは医師)は何を大切としているかがわかれば、指導医の望む情報をできるだけ効率よく伝えることができるということです。良い意味でコンサルトにも「おもてなし」は必要です。忖度という場合もありますが。この2点目について本書は切り込んでくれています。
(執筆者ではなく共著者の)私が執筆前になんとなく思っていたことは総合診療医はフル・プレゼンを期待しているという事でした。しかし、今回あらためてこのテーマと向き合って感じたことは、フル・プレゼンがコンサルトで必要とされることはまず無いと言ってよく、総合診療医へのコンサルトのテクニックとしては、困っていることを素直に伝えてもらうことが一番良いということです。"わからない、難しい症例のコンサルトを受けることこそ総合診療医にとっては力の見せ所"ということです。診断が難しい場合でも、マネージメントが難しい場合でも、少なくても丸太の総診ならばWelcomeであり、それを嫌がるような人は総合診療医には向かないと思うのです。
そういえば、かつて大病院で働いていた時に、総診ローテーションで自分の下で半年ほど研修してくれたことがある救急医から相談がありました。「先生、正直わからなくて、困っています。80代男性の発熱なんですが、〇日前に・・・・」と電話で相談されました。「とりあえず興味深い症例ということですね。見に行きます。」と私はコンサルトを途中で遮って電話を切ってしまいました。そして救急室で「じゃあ後は診ておきます。診断ついたらまた報告します」と言いました。救急医は私が回診で病歴や診察のプレゼンに細かく注文をつけることを知っていたため、驚いた様子でした。しかし、私にはその救急医の思考過程をカルテから十分読み取ることができたので、もはや胸痛患者が待機している救急室でこれ以上、その救急医の時間を奪うわけにはいかなかったのです。おそらく多くの総合診療医は細々としたプレゼンよりもどのように考えたかが知りたいと思います。
なお、今回の執筆には普段からコンサルト業務を多くこなしてくれている現場の医師にお願いしたためリアリティのある内容となっていますので、お手元にとって頂ければ嬉しく思います。
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