画像診断を学ぶならアンチョコ本だけではいけない。所見の名前を一生懸命覚えても画像は読めるようにはならない。そもそも不慣れな医師には所見の写った一枚のキー画像を選び出すことが、できないのだから。
本書は豊富な動画で、臨場感を持って実際の症例画像を読影しているかのような経験ができる。放射線科医ならではの洞察力と、救急医ならではの臨床能力が融合した結果がここにある。そう、著者である長谷智也先生は放射線科医でもあり救急医でもあるのだ。
優れた放射線科医は依頼文からの限られた臨床所見を頼りに、画像所見だけでストーリーを構築することができるという。これは卓越した素晴らしい能力である。我々救急医や内科医はその能力に憧れ、画像診断の勉強をする。しかし救急医が画像診断において放射線科医に勝ることは一生ない、と思う。それは読影のために注ぎ込んている時間が桁違いだからだ。だからこそ、臨床所見を大切にしながら、見逃しのない効率のよい読影方法を身に着けるのは現実的な目標であると思う。もちろん、臨床情報を隠してバイアスのかからない状態で
読影するのは訓練方法としては重要であるのも分かるし、救急医や内科医が放射線科医と比較して偶発的所見を拾い上げられていない事実も理解はしている。しかし、それでもなお、放射線科医から教わりながらも、放射線科医とは異なる勉強方法を選択するのは臨床医としては効率が良い気がする。
その点で本書は単なる画像診断の本ではなく、臨床的視点が加わることで救急医がより画像を馴染みをもって深く学ぶことを容易にしている良書と言える。
実は当院でも救急医でもあり総合診療医でもある吉川先生が似たようなコンセプトと書籍を出している。画像診断に興味のある後期内科研修医を対象として普段院内で行っているハイセンス・ハイクオリティのレクチャーを書籍内で再現したものであるが、非常に好評である。
救急画像を学びたいと言う場合は「救急画像診断のロジック」、内科疾患を学びたい場合や画像診断の考え方を学びたい場合は「ジェネラリストと学ぶ 総合画像診断」を手に取って頂きたい。
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