学生の時は、外来診療が上手な医師というのは時間軸を武器として戦えるんだ、とベテラン医師が言っているのを聞いた事がある。その時に分からなくても長い事フォローする中で答えが見えてくるのだと。研修時代は救急外来や急性期疾患メインで診ていたので、時間軸の使い方が良く分かっていなかった。
指導医の立場になって改めて思ったのは、時間軸を使うのが上手い医師というのは、病歴で過去を鮮明に遡れる医師であるということ。これは達人の領域ではあるが、医師となって40年後?に自分が引退する時にはその領域に達していたいものだと思う。
本書も時間軸の重要性に焦点を当てた書籍だ。シリーズ化されるという話もあるようだ。でも、これは達人になるための書籍ではない。研修医を手っ取り早く成長させる書籍であり、貧血があったら鉄剤を漫然と入れてしまいそうになる血液疾患が苦手な先生の苦手意識をとることができる書籍である。
時間軸は何も血算に限った話ではない。この書籍ではプロの思考過程も経時的に追いかけることができる。プロを模倣することは上達の秘訣であるというが、本書では最初の時点ではプロは何を考え、追加の経過でどのように考えて行くか、その思考をそのまま経時的に体験できる。血液疾患が苦手ではないが、もっと得意になりたいという人にもおススメだ。
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