立て続けに丸太町病院から書籍が発刊されましたが、これで一区切りつきます。内科医にとって目からうろこの目線で語る画像診断の話ですが、これは世に出したかった書籍というよりも、世に出すべき書籍と考え企画させて頂きました。
Amazonに画像が掲載されてからと思っていたのでまだ広告もしてませんでしたが、有難いことに、ベストセラー一位にもなっていました。ありがとうございます。
以下、監修の言葉です。
すべての臓器を診る事のできる医師になりたい。どんな病気でも診断できるようになりたい。そのような想いを抱きながらジェネラリストは日々、努力をしている。問診や身体診察を繰り返すことで診断スキルを磨き、病態生理を深く理解し、エビデンスにも目を通す。その努力の方法には多少の違いこそあれ、皆が登山家のように頂上を目指している。
では登山の途中で断崖絶壁が立ちふさがったとしたらどうするであろうか? ジェネラリストという自由な、しかし未熟で不安定な1本柱だけではこの断崖絶壁を乗り越えることは難しいのかも知れない。そこで何らかの工夫が必要となる。
ところでジェネラリストと同様に、成人においてすべての臓器の疾患の診断に携わる職種をご存じだろうか? それは放射線診断専門医(以後放射線科医とする)である。事実、著者である吉川医師は全ての疾患が診たいがために放射線科の門を叩いたという。ジェネラリストと放射線科医では診ている疾患は同じでも観えているものは全く異なる。吉川医師は放射線科医の視点だけでは満足できずCT室で問診を始めるという放射線科医としては変わり者であった。そして今では常時20名の後輩を指導するジェネラリストでもある。ジェネラリストと放射線科医という二つの視点(柱)を手に入れた吉川医師が、まるで梯子を用いるかのように簡単に断崖絶壁を乗り越えることができる事は想像に容易いのではないだろうか。
ジェネラリストがこの梯子を作るには放射線科医の知識が必要なのは言うまでもないが、実はここが落とし穴でもある。放射線科的な知識を頑張って身に着けてもジェネラリストと放射線科医という二つ視点(柱)がバラバラな方向を向いていては梯子とは言えず、壁を乗り越えることなどできない。ではどうすれば良いのか。それはジェネラリストと放射線科医の二つの柱を梯子のようにつなぐような学習をすることである。この書籍が今までにないところは、そのような学習ができるところである。そしてそのような学習をして気づくことがある。
1本の柱を長く成長させていくと、柱をかなり太くしなければ安定しないが、二つの柱の向きを揃えて梯子にしてしまえば支柱は必ずしも太くなくても安定するのである。つまり、梯子を立てかける先(物事の本質)さえ見据えることが出来れば、柱を太くする(知識量を増やす)必要はさほどないのである。そこで、本書では様々な症例を見比べながら物事の本質を見極めることができる読影方法について記述している。分かりやすく言えば「勘どころ」と言ってもよいかも知れない。
この学習方法が画期的であることは丸太町病院の総合診療科医全員が体感しているところであり、かく言う私も本書によりジェネラリストが大きな飛躍を成し遂げるものであると信じ、本書の完成を最も心待ちにしていた一人である。このような書籍の企画・監修に携われたことを大変嬉しく思う。
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