雑誌「総合診療」での連載「●胸腹痛をきたす“壁”を克服しよう|8 」です。
特集は「臨床写真図鑑レアな疾患編 見逃したくない疾患のコモンな所見」で、絶対売れる良いタイトル(良い内容)ですね。
私の胸壁症候群の連載は「胸膜炎と思ったが、胸水がない!」です。
若年者の発熱、激しい片側性の胸痛、深吸気で疼痛増悪です。
胸膜炎かと思ったけど、エコーでもCTでも胸水がないというシチュエーションです。
中年で微熱ならば肺塞栓症も考えますが、高熱で下腿浮腫がなく、循環呼吸状態は安定しています。
これは流行性筋痛症ですね。 流行性筋痛症は主にコクサッキーウイルスB群によって起こります。だから夏に多い。ヘルパンギーナ、無菌性髄膜炎などと同様ですね。
またウイルス感染だから小児に多い。成人では30歳代女性に多いんですがこれは母親だからですね。イクメンの私からすると、最近は男性にも多いハズと思いたいところです。
発熱・疼痛で発症することが多いですが、エンテロウイルス感染ですから消化管症状や気道症状があってもよいです。
疼痛部位は小児では腹痛、成人では胸痛が多いそうで、私が診た症例はほとんどが片側胸痛です。
筋肉が攣る事が原因のようなものです。横隔膜が攣るという考えもあるようで、 epidemic transient diaphragmatic spasm(流行性一過性横隔膜攣縮)の異名があります。 横隔膜付着部の圧痛確認が診断に役立つ可能性があります。また、まるでいきなり悪魔や幽霊に胸を摑まれるような疼痛の性状から“Devil’s Grip”や“the grasp of the phantom”という別名もついています。 病歴を確認する時の参考にしてください。
ヒトパレコウイルスで四肢筋痛・脱力が起こることが最近話題となっていますが、流行性筋痛症の亜型と考えることもできます。なにしろ、人Para-echo virusですからエンテロウイルスのお仲間による病気ですので。
数日で治る人もいますが、治癒までには1-2週間かかると説明しておいたほうがよさそうです。
Comments