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食品添加物によるアレルギー


甘味料によるアレルギー

エリスリトールは、ブドウ糖を原料とし酵母により発酵させて得られる糖アルコールである。天然甘味料とされるが、人工的に作ることも可能である。ショ糖の約75%の甘味を示し、厚生労働省の栄養表示基準において食品100g(液状で100ml)当たりの熱量が5kcal未満なので、近年、ゼロカロリーやノンカロリー食品への応用が広がっている。一方で、甘味料等の食物アレルギーの全国調査では、疑い例も含め、エリスリトールを原因成分とする割合が最も高かったという報告があり注意を要する。糖アルコールは一般に、小腸からの吸収は低いとされるが、エリスリトールは90%以上が速やかに吸収されるため、免疫寛容が起こり難く、経消化管的に感作すると考えられている。エリスリトールアレルギーの発症メカニズムについては、不明な点が多い。エリスリトールがハプテン抗原として、食品製造中あるいは生体内において蛋白質と結合し、IgEを架橋して抗原性を示す可能性や、エリスリトールの発酵過程で生成する中間代謝物が抗原となっている可能性の他、肥満細胞などを直接刺激するという可能性が挙げられている。

即時型アレルギーを診断するための検査には、皮膚テスト(①プリックテスト、②スクラッチテスト、③皮内テスト)があり、アレルゲンかどうかを評価できる。エリスリトールに対するプリックテストで約半数が陰性であったという既報告例があるが、これは、エリスリトールの分子量が非常に小さく、前述にあるようにハプテン抗原として作用するためと考えられており、診断を困難にする一因となっている。一方、エリスリトールに対し、皮内テストは陽性率が高いという報告があるが、①→②→③に進むにつれて、負荷するアレルゲン量が増えるため、アナフィラキシーを誘発する危険性が高まる。



着色料によるアレルギー

コチニールは、天然の赤色色素であり、サボテンなどに寄生するカイガラムシ科エンジムシの雌の乾燥虫体を、水あるいはエタノールで抽出して得られる着色料である。多くの食品(ハムなどの加工食品、炭酸飲料水など)、化粧品(口紅、マニキュアなど)、薬品に含まれており、アレルギーの報告が散見されている。コチニール色素のアレルギー発症には、複数の原因が存在する可能性が示唆されているが、主は、虫体由来の夾雑蛋白質が原因と考えられている。通常、食品中に使用されるコチニール色素によるアレルゲン蛋白への経腸管的な暴露によって感作されるわけではなく、化粧品として使用される色素中の夾雑アレルゲン蛋白への経皮経粘膜暴露によって感作が生じる。従って、コチニールアレルギーの症例報告は、化粧品の使用頻度が高い年齢層の女性に多く発症している。



増粘安定剤によるアレルギー

ペクチンは、柑橘類やリンゴの果皮に多く含まれており、水で抽出して生成される増粘安定剤である。食品添加物として、ジャム・ゼリーなどのゲル化剤やヨーグルト飲料などの乳蛋白安定剤として使用されており、さらに水溶性の食物繊維として、栄養補助食品や医療品分野にまで用途が広がっている。ペクチンは増粘安定剤の中で、最もアレルギーの報告が多く、吸入による喘息症状と経口摂取によるアナフィラキシー症状に大別される。経口摂取によるアナフィラキシー症状は、カシューナッツやピスタチオとの交差反応性を原因として、発症すると考えられているため、それらに対し、アレルギーを持っている患者は、ペクチンアレルギー発症の可能性を考慮しなければならない。


③ 重要ポイントのまとめ
  • 食品添加物によるアレルギーは、甘味料、着色料、増粘安定剤によるものを考える

  • エリスリトールアレルギーはプリックテストが陽性となり難いため、病歴からそれを強く疑った場合、アレルゲン回避の指導を考慮する

  • コチニールアレルギーは、経皮経粘膜暴露により感作されて生じるので、コチニール色素が含まれた化粧品の使用頻度が高い女性に多く発症している

  • カシューナッツやピスタチオアレルギーがあると、その交差反応により、ペクチンアレルギーが生じる恐れがある


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