Early Dual Versus Mono Antiplatelet Therapy for Acute Non-Cardioembolic Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack An Updated Systematic Review and Meta-Analysis
Circulation. 2013;128:1656-1666.
非心原性脳梗塞に対するDAPTは,有意に脳梗塞の再発を減らし,出血を増やさない.
という結論.
以前にも同じグループから脳梗塞に対するDAPTに関するmeta-analysisが2012年出ていて,そこでもDAPTが有効との結果.新たに2つの論文を付け加えたところ,有効性が再確認されたというもの.
実際2015年の日本の脳卒中ガイドラインでも,抗血小板薬2剤併用は発症早期の非心原性脳梗塞,あるいはTIAにあ急性期までの治療としては勧められている(グレードB)
ということで,実際どうなのかを読んでみた.
Patient: 非心原性脳梗塞で3日以内に抗血小板薬が投与された患者.TIAも含まれる.
Intervention/Comparison: DAPT vs 抗血小板薬単剤
Outcome:
①脳梗塞の再発
②脳梗塞,TIA,ACS,死亡のcomposite
③GUSTOでmoderate-severeの出血
文献検索:pubmedのみで不十分.英語のみで不十分.
研究の質の評価:いわゆるJadad scoreなどはつけられていないが,独自の評価A/Bはつけられている.Aがランダムでblind,Bはそれ以外.
不均一性はI^2とcochran's Q testが行われ,heterogeneityはないとされている.
しかしながら,研究ごとで使用されている薬剤の種類も投与量もまちまち.
更に投与期間や観察期間までもまちまち.イベントがいつ起きたのかに関する記載がない.
ASAとDAPTの比較が多いが,monotherapy群のASAの投与量はほとんどが75mg~100mgで標準よりは少ない.なのでASAの200mgとの比較ではどうかはわからない.脳卒中ガイドラインでは160mg~300mg.
さらに気になるのは,一部のstudyでNIHSS≦3やmRS≦3など軽症のみを取り扱った論文が多い.
また,一般的には慢性期(一年以上)のDAPTは出血リスクを高めるため,有害とされているものの,DAPT投与期間が3ヶ月程度のものが多い.中には2年に及ぶものも含まれている.一方で,脳梗塞再発をどこで区切っているかは記載されていない.
結果
①のoutcome: 脳梗塞の再発に関しては,RR 0.69 (0.60-0.80)とリスクの低下がみられた.
subgroupではアスピリン+クロピドグレル vs アスピリンのみ有意差をもってリスク低下が見られたが,CHANCE 2012がかなり結果を引っ張っている印象.
そこで,CHANCE 2012を除いたsensitivity analysisも検討されていて,有意差を持って脳梗塞再発の減少が見られている.
これは,②のcomposite outcome.
同様にリスク減少が見られている.
こちらもChanceを除いても,有意差を持ってリスク減少.
出血リスクは,増加傾向があるものの,有意差はなかった.
CHACE 2012を除いても出血リスクの有意差はなかった.
RCTだけに絞ったsensitivity analysisでも同様の結果でrobustnessも確認.
読んでみて,じゃあやるかといえば,そもそも投与量やベースラインの脳梗塞の重症度が異質すぎる.meta-analysisとしても不完全.
恐らくcochranには載せてもらえないレベル.
それから標準のASA 200mgと比較した場合DAPTが優れるのかということは何ともいえない.とは言え,DAPTも症例を絞れば悪くはないのだろう.
さらに,結果が圧倒的にnの多いCHANCE 2012に引っ張られている.もちろんCHANCE 2012を除いた分析もされて同様の結果が得られているが,CHANCE 2012を確認しておく必要はある.
ということで,本日の担当者の先生は,そこまでチェックしてくれました.
CHANCE 2012
ASA 75mg vs ASA 75mg + clopidgrel 75mgを比較したもの.
Intervention群が,21日目までDAPTでその後,clopidgrel単剤
Control群がずっとASA 75mg
なぜ,このような形にしたのか違和感しかない.ASAもやっぱり少ない.慢性期の量としては適当.
エントリー患者は,TIAか軽い脳梗塞.
結果はDAPTの方が,有意に脳梗塞再発を減らした.HR 0.68 (0.57-0.81, p<0.001)
やっぱり軽症患者が多い.おそらく重症患者では出血リスクが高くなるから.
ASAの量は少ない.
また,高血圧,DM,脂質異常症などの治療がきっちりなされていない.中国ということが関係しているのだろうか.なぜか脳梗塞は中国からの論文が多い.
慢性期においては,ASA用量の増加はリスクの減少につながらないということになっているが,急性期に関しては不明であり,有名なCAST studyなどでも160mgとなっている.あえて減らしていた意図がわからない.
ということで,ASA 200mgがよいのか,DAPTがよいのかはわからない.
とは言え,軽症患者でかつ,出血リスクが低いのであればDAPTは21日までを目安として検討してもよいかもしれない.
本当は,重症患者にこそ再発予防をしたいものだが,出血リスクが高いため困難になる.
BADや前脈絡叢動脈領域の梗塞で梗塞巣小さいけど麻痺が強く症状が重篤な場合には,良い適応になるかもしれない.