Risk of Aortic Dissection and Aortic Aneurysm
in Patients Taking Oral Fluoroquinolone
JAMA Intern Med. 2015;175(11):1839-1847.
台湾からのcase control study.
RCTに比べるとみんな読むのが難しかった様です.
あまり難しい話になるとあれなので,まず基本的なコホート研究,case control studyなんかの話だけしてから読みました.
リーダーになるとこの辺の話も指導していかないといけませんね.ちょいちょい説明していますが,みんなあんまり興味を持ってくれないのが残念です.教え方が悪いかもしれません...
RCTを組むわけにもいかないので,コホート研究でも出てこなければ,これをひとつのエビデンスにせざるを得ないような論文.もちろん,バイアスはなくせませんが.
患者は,NHIRD(台湾の医療データベース;流行りのビッグデータの一種みたいなもんでしょうか)から抽出された入院を必要とする大動脈瘤,大動脈解離を2000年〜2011年で初めて診断された患者.2000年時点で18歳未満の患者は除かれている.
そのコホートからcontrolは年齢,性別,caseの診断日をmatchさせて100倍の数をランダムに選択.
今回の対象となる曝露はキノロンを3日以上内服したというもの.
current useをindex dateから60日以内.
past useを61日から1年以内
any prior-year useをどっちも合わせたもの
とした.
後で,詳細は述べるが,多変量解析,propensity scoreを用いた解析,sensitivity analysis(手術を必要としたもの:手術+TEVAR+EVAR),subgroup analysisも行っている.
covariatesは,過去の報告から96個選ばれている.
まぁ,比較的だとうなものがきっちり選ばれている.
当然,解離を起こしている人は色んなリスクが有意差をもって多い.
さて,これらを多変量解析,propensity scoreなどで調整した結果が以下の様なもの.
調整するほど,Odds比は小さくなるものの,current useにおいては全てで有意差が出ている.
sensitivity analysisでも同様の結果.
subgroup analysisでは,70歳以上,以下にわけても同様の結果.70歳以上ではよりOdds比が高い傾向.性別で分けても似たようなもの.
投与期間でも調べられていて,投与期間が長い方がリスクが高い.
読んでみて.
ちょっと綺麗に結果が出すぎている印象はあるものの,case-control studyとしてしっかり作られている.
冒頭でも述べたがRCTを組めるわけないので,これよりよいエビデンスとなればコホート研究しかない.
研究の性質上,本質的に交絡因子を完全に除くことはできないものの,多変量解析,propensity score, sensitivity analysis, subgroup analysisが全て行われおり,全て同様の傾向.
キノロンしかない場合は別として,他に選択肢があるのであれば,耐性菌の観点からもやはり安易に使用する薬ではない.
前日のY先生のレクチャーでも腸球菌やESBL前立腺炎にホスミシンが使えるかもしれないという話があったが,特にでっかい瘤がある人は考慮はしてもいいかもしれない.
とは言え,現在進行中のESBLによるbacteremiaを伴ったUTIにおけるMPEM vs FOMの結果(BMJ Open 2015;5:e007363)が出るまでは,この論文をもってしてFOMにしておきましょうとまでは思わない.
もちろんこの結果が,非劣性とでても前立腺炎にCPFXの代わりに,ましてやSTの代わりにFOMを投与できるという根拠には直接はならないですが.