月刊レジデントノート1月号に当院Y先生の記事が掲載されました(すでに2月号が発売された後での紹介となり申し訳ないです)。
感冒に不要な抗菌薬を処方することは有益性は皆無で、害しかないことは皆さんご理解頂いているでしょう。抗菌薬で1人の肺炎を予防するためには,副作用に悩む患者さんを少なくても14人作りださなければならないことは特記すべき事です。
他の”風邪薬”にはどのくらいの意味があるのでしょうか? 結論だけいうと、解熱鎮痛薬が症状緩和に役立つというエビデンスはありますが、それ以外の薬剤に有用性はほとんど証明されていません。これらのエビデンスについて記載してありますので、書籍をご覧いただければ幸いです。
Choosing Wisely Campaignに代表されるように、不要な薬剤の処方を慎もうという動きが世界的に(ようやくですが)広がっています。不要な薬剤の処方は患者さんに起こる副作用という意味でも、医療経済的にも、そして医師にとっても害です。 なぜ医師にとっても害になるかですが、例えば感冒に対して抗菌薬を処方/内服することを繰り返すと、「抗菌薬を処方/内服する→感冒がよくなる」という図式が頭に出来上がってしまいます(実際には抗菌薬がなくても感冒は治るわけですが)。これをオペラント条件づけと言います。犬に芸を仕込むとき時のアレです。何かをすると褒められる、餌をもらえる。そうするとその行動が取りたくなってしまうという動物の摂理で、強力な効果があります。感冒に対して抗菌薬を処方しない/内服しない人からみると不思議に思えてしまいますが、処方すればするほどダメな経験が積み重なりその人の行動を制限してしまうわけです。風邪に本当な必要な薬剤だけを吟味して処方を決められる医師になりたいものです。そうすれば患者さんが不要な薬剤を求めることなくなるでしょう。
そこで、研修医の先生に一言。「いかなる薬剤も安定剤代わりに処方するな」。不安であれば検査をすればよいでしょうし、不安であれば短期でフォローしてください。その経験が医者としての貴方を成長させるでしょう。安易に“安定剤”を処方してしまうと依存になってしまいます。