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気切は1週間程度を目処に考える.

Timing of tracheotomy in ICU patients: a systematic review of randomized controlled trials

Critical Care 2015;19:424

気切のタイミングに関するsystematic reviewです.

結論から言えば,極めて質が低く,この論文からは何も言えません

メタアナリシスを読む難しさを体験できたという意味で良い論文だと思います.

Cochraneのメタと,それ以外のメタでは,後者の方がeffect sizeが大きく,正確性に欠けており,両者に共通してincludeされた論文は驚くほど少なかったと言う話(PLoS One. 2015 Dec 15;10(12):e0144980.)もあるので,2015年に出ていたCochrane reviewと比較したらおもしろいかと思い,個人的に合わせて読んでみました.

左が,Cochraneのeffect sizeで,右がnon-cochrane のeffect size. ある程度の一致は見るものの,全然違った結果にもなり得るということの様です.

合体させるとこんな感じ.感覚的にはCochraneでいまいちと言われたもの程,non-Cochraneとの結果のずれが大きそうです.

ちゃんと読むと質は,Cochraneの方が良かった.

 

ということで,今回はCochran側(Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jan 12;1:CD007271.)と,non-Cochrane側(Critical Care 2015;19:424)を並べて比較します.

細かいことは,省きましたが,概ねこんな感じです.ざっくり言えば,圧倒的にCochraneの方がちゃんとしています.

特に気になったところが

①3つ+1つも比較しているのに,Bonferroniなどで多重検定の問題を解決していない.

②検索範囲が狭い.

③出版バイアス評価や追加の解析を全くしていない.

 

non-Cochraneの結果を見ます.

論文に出てきた順番.

気管切開率

当たり前だけれど,early群で高い.異質性は気になるが,重要なoutcomeではないので一旦保留.

 

a)人工呼吸器期間

b)人工呼吸器離脱期間

有意差がついたのは, 人工呼吸器離脱期間のみ.これはI^2=40%-55%でまぁまぁのレベル.

a)に至っては,3つともI^2=80%以上で,全て合わせると別々に全て統合すればI^2=94%という異質性.

にも関わらず,それら3つをまとめたと言う呈のI^2=0%を表記するというもはや数字遊びのレベル.

 

a) sedationの期間

b) sedation-freeの期間

a)は異質性高い(totalでI^2=99%)ではあるものの,おそらく一番上の2つが信頼区間小さい関係でそう見えているだけで,重要な異質性とは言えないだろう.

そもそものメタアナリシスの質が低いとは言え,sedationの期間は減ったと言って良い.

 

a) 短期間の死亡率

b) 長期間の死亡率

長期死亡に関しては,異質性は思ったよりマシで,有意差もでている.もちろん多重検定しているが・・・.

表にはなっていないが,ICU入院期間はoverallで減少し,肺炎の増加はなかった.

ちなみにバイアスリスクはこんな感じ.

 

長期死亡率が減少したというのは,重要な結論.メタアナリシスの質は低いが,Cochraneでも同様の結論が出ている.

これでは,外れてしまったRCTも含めてsensitivity analysisを行っており,同様の結果を得ている.

このCochraneも合わせると,まずまずのevidenceにはなり,早期に行うのは有用と言える.

しかし,含まれたstudyは,多くが1週間以内程度の気切であり,早ければ早いほど良いと言える様なエビデンスはない.しかも,明らかな侵襲的手技を行うので安易に早期に気切とはならない.現実的には1週間位で考慮するという程度.

本当は,統計を含めたmeta-analysisの評価を自力で出来るのが大事なのだろうし,雑誌で決めてはいけないというものの,やっぱり読むならCochrane Reviewの方が良いのだろう.

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