関節リウマチの治療に関してMTXが第1選択の治療であるが、MTXに併用する薬剤は何がよいのか? 過去の報告で、MTX+スルファサラジン+ヒドロキシクロロキンの3剤併用は生物学的製剤使用と比較して短期予後は悪いが、長期的には追いつき、同等の効果があるという報告などがあった。 今回は無作為化試験(準ランダム化試験を含む)を対象とした系統的レビューとネットワークメタアナリシスで現在までのエビデンスがまとめられた。
BMJ. 2016 Apr 21;353:i1777. Medline、Embase、cochrane centralに2016年1月19日までに登録された研究や、2009~2015年に、2つの大規模なリウマチ学会で報告された研究の抄録をエントリー。
主要評価項目は、ACR50達成率、画像で確認された関節破壊の進行、有害事象による治療中止/死亡。 158件の臨床試験(3万7000人超)を選出。バイアスリスクの高い研究は除外。
今回はデータの多いACR50での評価と、有害事象による治療中断にだけ注目してグラフ化してみました。 ★MTX使用歴のない患者
MTX単独より併用の効果が最も得られるのはトファシチニブとエタネルセプトであった。それ以外の生物学的製剤の併用効果も認められたが、スルファサラジンとヒドロキシクロロキン(日本ではRAには未承認)の単独の効果はほとんど認められなかった。 スルファサラジンとヒドロキシクロロキン とMTXの3剤併用はアダリムマブ、インフリキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ゴリムマブよりも効果が高い傾向にあった。
上図は相対リスク比で作成したもので、左上が最も併用の価値が乏しく、矢印の向き(右下)が最も価値の高い併用薬であることを示していますが、95%信頼区間を表示していません(楕円形の大きさで簡単に信頼区間を表示できるソフトがあったら視覚化しやすいのですが、だれかそんな無料ソフト知っていたら教えてください)。そこで、下図のように信頼性に重きを置いて、描きなおしたグラフも作ってみました。今度は矢印の向きが変わって右上がもっとも優れる併用薬であることを示しています。これによると、スルファサラジンやヒドロキシクロロキン単独を追加することで効果はあまり期待できませんが、それ以外の薬剤(つまりは生物学的製剤、トファシチニブなど)はすべて併用効果が明らかです。一方、薬剤によって異なるのは副作用中断率で、これはスルファサラジンとヒドロキシクロロキン とMTXの3剤併用 が最もすぐれ、エタネルセプトやアバタセプトも副作用が少ないという結果でした。有意に副作用が増えるのはアザチオプリン併用の場合のみでしたが、このグラフからはインフリキシマブやトシリズマブは副作用の問題に注意が必要そうです。
★MTXが効果不十分で、追加治療を行う場合
この場合エタネルセプトと スルファサラジンとヒドロキシクロロキン とMTXの3剤併用が効果が優れるという結果でした。金製剤は効果に対するRRが最も高いですが信頼区間が広いため、実際に効果が得られる可能性は低いです(もう一つ下の図参照)。
安全性を考えるとやはりアバタセプトが優れます。当院では高齢者にアバタセプトを用いる症例が増えていますが、感染症で困ることは確かに少ないように思います。一方、インフリキシマブやトシリズマブには注意が必要なようです。やはりトシリズマブはMTXが使えない場合やほかの生物学的製剤が無効な場合に使いたい薬剤です。下図では スルファサラジンとヒドロキシクロロキン とMTXの3剤併用の副作用が多いように見えますが、MTX単独より有意に副作用中断率が高いのは高用量トシリズマブとシクロスポリンだけでした。
まとめると、 スルファサラジンとヒドロキシクロロキン とMTXの3剤併用は生物学的製剤に匹敵するほど有効で、副作用は生物学的製剤とプロファイルが異なるため一概に少ないとは言い切れないが、薬価は雲泥の差であることに留意すべき。
もっとも、日本でよく用いられているであろうスルファサラジンとブシラミンとMTXの3剤併用はどれほど有用なのか、残念ながら質の高いエビデンスはない。
生物学的製剤の中ではアバタセプト、エタネルセプトの安全性が高く、インフリキシマブ、トシリズマブは副作用が多い。投与間隔が短いため当院ではエタネルセプトの人気があまりありませんが、効果・副作用バランスに優れた薬なので、もう少し使う人が増えてもよいかも知れません。