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医学書院「総合診療」の特集企画・執筆させていただきました。

総合診療 2016年5月号 特集

しびれるんです!─知っておくべきシビレル疾患

EndFragmentの企画をさせて頂きました。月末となりますが、おかげさまで、まだAmazonベストセラー1位(カテゴリ 医学・医療の雑誌)を維持しています。しびれは本当に困るけど、わかると嬉しい症候ですよね。

内容は以下のような構成になっています。

■総論 「しびれる人」にどうアプローチするか?上田 剛士 ■限局した部位のしびれ-単神経炎を中心に 

手がしびれます 太田 英之 足がしびれます 高岸 勝繁 ■多発神経炎の鑑別診断 多発神経炎はどのように鑑別を行えばよいのか? 上田 剛士 本当に靴下・手袋型ですか? 土肥 栄祐 ギラン・バレー症候群は非典型例が典型的 東田 京子・川本 未知 ■コラム「専門医にお願いする前に」  上田 剛士 (1)手根管症候群では内科的疾患を除外せよ (2)「脊柱管狭窄症」として紹介する前に Vesperの呪い (3)見落としやすい「むずむず脚症候群」 (4)一度は考えるべき薬剤性 ●Editorial 総合診療は「シビレル」分野だ!上田 剛士

今回は私の書いたコラムから一つだけ紹介させていただきますが、執筆頂いた各先生のお陰で素晴らしい内容となったと思っておりますので、一度お手元にとって頂ければ幸いです。

脊柱管狭窄症として紹介する前に:VESPERの呪い

腰部脊柱管狭窄症の既往がある75歳男性が尿路感染症で入院した。抗菌薬の点滴投与にて解熱し食欲も回復した。しかし腰部脊柱管狭窄症の症状である背部~両下肢の疼痛が増悪し、夜間に疼痛のために目覚めるようになった。原因として考えられることは何か?

 腰部脊柱管狭窄症では腰椎を伸ばした立位で疼痛が増強します。そのために神経性間欠跛行が出現しますが、仰臥位で下肢を伸ばした状態でも腰椎が進展した状態であり疼痛は起こりやすいです。そのため夜間就寝中に疼痛を訴える事はありますが入院中に増悪した理由はなんでしょうか。

 実は心不全があると腰部脊柱管狭窄症の坐骨神経痛が増強しやすいことが知られており、就寝後に疼痛のために眠られない様子からVesper’s curseと呼ばれます。心不全では脊椎周囲の静脈(Baston静脈叢)が怒張することがMRIで確認されており、Vesper’s curseは右心不全による静脈うっ滞症状と解釈されています。また腰部脊柱管狭窄症の患者のうち睡眠を障害されるほどの夜間疼痛を訴えた群では脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が137±62pg/mlであり、夜間疼痛がない群の68±47pg/mlよりも有意に高かったという報告もありますが、期待されるほど大きな差異ではありません。つまり、腰部脊柱管狭窄症の夜間疼痛の一因として右心不全があるが、その原因の全てではないことも確かということです。

 なお、本症例は補液に伴う鬱血が疑われ、利尿剤処方を加えたところ症状は軽快しました。

Am J Phys Med Rehabil. 1988 Aug;67(4):155-60.

Am J Phys Med Rehabil. 2001 Feb;80(2):129-33.

Am J Phys Med Rehabil. 2008 Oct;87(10):798-802.

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