第21回日本心療内科学会総会・学術大会 テーマ:一隅を照らす 医療のあるべき姿と心療内科 シンポジウム「一般診療の不定愁訴患者に心身医療をどう活かす?どう発信する?」 で発表しました。
場所は奈良春日野国際フォーラム 甍(いらか)
朝から沢山のシカと遭遇。 なごむなあ。さすが心療内科学会。
聖路加国際病院心療内科 太田大介先生 デンマークでは出生時から決まった登録医が診みていくので不定愁訴を受け入れる基礎が定まっているが、日本では自由に受診するので不定愁訴を受け入れることが難しい。デンマークの医療は全く知らなかったですが、他国と比べるのも大事なことですね。 Bodily distress syndrome 全身症状、消化管症状、筋骨格系症状、心肺症状のうち3つがあれば診断。 これ、3臓器以上障害されていたら器質的疾患(内分泌疾患・膠原病や結核・リンパ腫など例外はあり)ではない、という時々私が言う経験則と似ています。 昔誰かに聞いたことがあったのかも知れません。 森田療法・内観療法・生活臨床など日本で古来よりある心理療法は症状を問わない。 これらが心理を扱うのと比べ、認知行動療法は症状、マインドフルネスは身体をターゲットとしている
私の話は普段の診療のお話です。 身体診察で非器質的疾患をRule in。 病気不安症を作り出しているのは内科医かも知れない。 患者の不安に対して「○○ではない」だけでは不十分。 適切な病態の説明、良かったですねという説明、適切なフォロー。 認知行動療法は10分でも効果ある。 心因反応を疑った場合、その患者さんの背景を知り、共感できた時には泣く患者さんが多い。だから泣かせたら勝ち、という話をしました。後のDiscussionで「我々は泣くボタンを探しながら診療している」と三谷先生が仰っており何か安心しました。
ところで控室からの庭も絶景。 私は患者説明について少し触れましたが、この事がセッションが終わってからも大事な事であると控室で議論の一つになりました。 患者さんの解釈モデルをどのように誘導するか、また「もっともらしい説明」をするにはどうするか。 私自身はさほど良い答えを持っていませんが、患者さんと向き合う事が多いプライマリケア領域では個々の先生が築いたいろいろなノウハウがありそうですね。 来年の適々斎塾でDiscussionの場を設けようと思います(私が教えてほしいことが多いので)。
医療法人三谷ファミリークリニック 奈良県立医科大学大和漢方医学薬学センター 三谷和男先生 漢方薬の効果判定上、味は重要。 小学生の時にアトピーで受診した医院では口のなかに何か漢方放り込まれて「どう?」と聞かれた理由はこれか。 漢方は証に落とし込むので不定愁訴というものはない。素晴らしい。 証というのは患者さんのとの人間関係で決まるものらしい。また舌診というのも全身概観と合わせて判断するようでした。この辺りは私の不得手な分野ですが、言わんとすることは感覚的に分かるし実際に”General appearence”や顔色として利用しているとも思いました。 患者さんを生物学的な存在だけで考えず、社会的な存在として扱う。その通り! 症状を呈しているのは何らかの理由があり、それは心理社会的背景からこれ以上がんばるな、という警告かも知れない。その理由を追求すべし。なるほど。
会場には「非器質的疾患・心因性疾患で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス」ではなく、 あなたも名医が置いてあった。この本は丸太町病院のみんなで書いた思い出深い本ですのでうれしい。
Bodily distress syndromeは私は知らなかったのでシンポジウムが終わり次第調べようとしたらなんと会場ではWiMaxが通じない。これは致命的。慌てて会場を後にする・・・