在宅新療0-100 2018年10月号の特集は 明日からちょっとラクになる在宅医療のコツ伝授します でした。 私の連載 「在宅患者の増悪・急変を見抜く 入院を回避するための気づき,アセスメント,エビデンス」は 「困ったときの皮下輸液」を取り上げました。 皮下輸液は100年以上前から行われている方法ですが、1950年代に不適切な方法(後述)のために廃れてしまった歴史があります。しかし、適切に用いれば簡便かつ安全な水分補給法です。合併症は静脈輸液よりもむしろ少ないです。
添付文書で皮下投与が認められている輸液製剤は生理食塩水だけです。また多くのビタミン類(ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンK、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン)も皮下投与が認められています。それ以外の輸液製剤に関しては添付文書では投与が認められていませんが、末梢静脈路から投与できるリンゲル液、電解質を含む糖液(1号液、3号液)などの製剤は安全に投与できることが文献で示されています。なお輸液中のカリウム濃度は20-40 mEq/Lまで可能です。
ブドウ糖は拡散が遅く、局所に水分を引きつけて血管内脱水を引き起こすことから、特に脱水患者に投与するとショックになりえることに注意が必要です(これが1950年代に皮下注射が廃れた理由です)。そのため、電解質を含まない5-10%ブドウ糖製剤の投与は避けるのが無難であると思われます。またアミノ酸を含んだ末梢静脈栄養輸液製剤の投与も可能ですが、局所の炎症を惹起しうるため、筆者は用いてはいません。
皮下投与が可能な薬剤の例を以下に記します。下線の薬剤は添付文書でも皮下投与が可能な薬剤です。それ以外の薬剤の場合は十分なICを行ってからもちいるべきでしょう。