今月の「総合診療」の特集は
‟ヤブ化"を防ぐ! 「外来診療」基本の(き)Part2
です。2019年9月号に次ぐ第二弾になっています。
私の連載は遅発性筋肉痛(Delayed-Onset Muscle Soreness : DOMS)についてです。
DOMSは運動後6-12時間してから始まり、48-72時間後にピークとなり、5-7日で治まります。筋損傷により炎症が惹起され、その炎症により生じる筋肉痛であるため、発症までに時間がかかると考えられています
7日間の間隔をあけて、最大等尺性収縮力の115%の負荷を24回かけた場合のデータを下に示します。左図:若年者(23.6±3.3歳)、右図:高齢者(67.4±5.3歳)ですが、高齢者のほうが2日目にピークがあり、遅れて筋肉痛になる傾向が示されています。
Journals Gerontol. 1988;43(4). PMID: 3385145
しかし、この報告ではピークのタイミングに有意差はありませんでした。また以下の5つの報告からも年齢による発症タイミングの違いは見いだせん。
Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 1990;60(3):183-186. PMID: 2347319
体力科學. 2004;53(6):684.
体力科學. 2005;54(6):543.
Med Sci Sports Exerc. 1991;23(9):1028-1034. PMID: 1943622
症例数が少ないがために有意差が得られなかった可能性は十分にあるものの、DOMSのタイミングは年齢により大きな差異があるとは言い難いでしょう。それよりも先ほどの図からは2回目の運動ではDOMSが起こりにくいことに注目してください。つまり、歳をとると、運動不足な人が多く、DOMSが起こりやすく、そのために遅れて筋肉痛になると感じている可能性が高いと思われます。一方、若年者では普段から運動強度が高いのでDOMSとはなりがたいですが、”過激な”運動をしがちであり、筋損傷を来し運動直後の疼痛が多いことと対比的です。
Pearl: 遅発性筋肉痛が出現した場合、歳をとったと感傷に浸っているよりは、運動不足を嘆き、明日から生活習慣を改める方が医学的には正しい。
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