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執筆者の写真Y

パンケーキ症候群

更新日:2022年4月29日

アレルギー疾患に関するメモ書きです。



小麦粉製品中のダニアレルゲンを経口摂取して生じるアレルギー症状をパンケーキ症候群(oral mite syndromeともいう)と言います。この疾患概念は1993年に初めて報告され、以後徐々に認知されてきている疾患です。病態は、経皮・経粘膜・軽気道的にダニに感作した後に、ダニに汚染された食品を摂取することにより消化管でダニアレルゲンに暴露し全身性のアレルギー症状を生じると推定されています。天ぷらなど揚げ物でも報告があり、加熱食品でもダニの抗原性が失われない可能性があります 。また、最近は小麦粉製品以外でもコーンフラワー(トウモロコシ粉)やオートフラワー(オーツ麦粉)によるパンケーキ症候群の発症例の報告もあります。

パンケーキ症候群に統一された診断基準はありませんが、表1のような診断基準案を参考に診断します。


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表1:パンケーキ症候群の診断基準案(何項目で陽性かは決まっていない)

① 小麦食品の摂取後に一致した症状

② 鼻炎、喘息などのアトピー性疾患の既往歴

③ ダニ抽出液のプリックテストが陽性または血清ダニ特異的IgE抗体が陽性

④ 小麦食品(被疑粉)の抽出液の皮膚テストが陽性

⑤ 市販の小麦抽出液の皮膚テストが陰性

⑥ ダニ非混入の小麦抽出液の皮膚テストが陰性

⑦ ダニ非混入の小麦食品を摂取しても症状が出ない

⑧ 顕微鏡下で小麦食品(被疑粉)の中にダニを認める

⑨ 小麦食品(被疑粉)の中のダニ抗原が陽性

⑩ アスピリン/NSAIDs過敏症

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パンケーキ症候群と診断する際の注意点です。2004年に日本からの報告で、未開封の小麦粉製品176製品のうち3製品からダニが検出されたという論文があります。つまり、顕微鏡下で小麦食品(被疑粉)の中にダニを認めた、という事実だけでは、パンケーキ症候群と診断する根拠が不十分である可能性があります。表1を確認し、他の病歴や検査所見も確認し、総合的に診断する必要があります。


パンケーキ症候群の発作時は、一般的なアレルギー症状、アナフィラキシーと同じように対応します。パンケーキ症候群は予防を徹底することで発症を防ぐことができます。表2に予防のポイントをまとめましたので生活指導の参考にして下さい。


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表2:パンケーキ症候群の予防(特に①〜③が重要)

① 包装された小麦粉の保存期間は短くする

② 小麦粉は冷蔵庫で保管し保存期間は8週間以内にする

③ 小麦粉をガラス容器やペットボトルに入れて密封して保存する

④ 空気清浄機などにより空気の質を改善する

⑤ 住宅の湿度を下げる

⑥ 家具や床の清掃・消毒をする

⑦ ダニの駆除剤を使用する

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一般的にダニは温度27℃以上、湿度70%以上の環境で繁殖しやすいとされているので、封を開けたら冷蔵で密封保存し、できるだけ早く使い切ることが重要です。


重要ポイントのまとめ
小麦粉製品摂取後のアレルギー/アナフィラキシー患者ではパンケーキ症候群の可能性も想起する
治療は一般的なアレルギー/アナフィラキシーの治療に準じる
診断の根拠として、ダニ非混入の小麦食品を摂取しても症状が出ないこと、顕微鏡下で小麦食品(被疑粉)の中にダニを認めることを確認する
予防により発症を防ぐことができるため、小麦粉は冷蔵庫で保管し保存期間は短期間にするといった生活指導をしっかり行う

追記:小麦粉やコーンスターチなどではダニ増殖は軽度ですが、ホットケーキミックス、お好み焼き粉や、アミノ酸などが添加してあるてんぷら粉、唐揚げ粉では常温で5-8週間すると急速に増殖します。表2は文献からそのまま引用していますが、密閉容器に移し替えても最初からダニは混入しているわけですから意味はないという報告もあります。しかし冷蔵庫では繁殖をかなり抑えることが出来ますので、開封後は冷蔵庫に入れるのが何よりも大切です。


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