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執筆者の写真Y

医師じゃなくても知っておきたいバイタルサインと発熱患者の診察の話


今回は体温に関して事前質問も頂きましたので、少しスライドを追加して説明させていただきました。


よく質問のある、発熱とは何度からか?問題です。

日本では腋窩温測定が多いです。腋窩温では37.0℃までが基準値という報告があります。そのため、37℃以上を微熱とすることが多いように思いますが、明確な基準はありません。

例えば高温期では体温は高くなりますので腋窩温でも37℃を超えることは珍しくはありません。しかし、腋窩温≧37.5℃は基準値から外れすぎるだろうということで、37.5℃以上を発熱とするのが一般的です(感染症法における基準)。また38.0℃以上を高熱と言います。


次に、「平熱は35℃台と低いから36℃台でも発熱」問題です。確かに本当に普段と体温が異なるならば、それは異常とみなすべきですが、実際には誤解が多く認められる状況と思います。

まず、 日内変動です。一般的に 早朝3-6時に最も体温は低く、夕刻16-21時に最も高いとされています。直腸温でも腋窩温でもおおよそ日内変動は1.0℃あります(Biol Res Nurs. 2004 Jan;5(3):187-94 PMID: 14737919)。 そのため、朝35.8℃が平熱であったとして、夕方36.8℃あるのは発熱とは断言できないというわけです。なお、入院中の熱型をみて1℃も日内変動はないと感じる方も多いと思いますが、 高齢者の 腋窩温は36.2[35.7-36.6]℃、直腸温は37.1[37.0-37.2]℃で若年者よりそれぞれ0.3℃、0.4℃低く、日内変動は0.4℃と少ない(J Clin Nurs. 2010 Jan;19(1-2):4-16 PMID: 19886869)ことが報告されています。特に覚醒リズムが障害されている場合にこの日内変動は小さいとされています。

二つ目の問題は腋窩温の測定は再現性に問題があるということです。例えば腋窩温は1時間以内に1.0-1.5℃の変動がみられるが、直腸温は0.1-0.3℃のみである(Chronobiol Int. 2002 May;19(3):579-97. PMID: 12069039)という報告があります。 腋窩温は左右差が1.9℃までありうる(J Assoc Physicians India. 2000 Sep;48(9):898-900 PMID: 11198790)という報告すらあります。これは腋窩が深部体温ではなく皮膚表面の温度を反映するということもありますが、体温計と皮膚が十分密着していないという問題もあります。特にやせ型の方の場合はしっかりと腋窩の奥に体温計を差し込み、対側の腕も使ってしっかりと密着させるようにしないと正確な測定ができない場合があることに注意しましょう。「今まで測定して一番低かった熱が平熱」と考えている方がいますが、それは大きな間違いです。しっかりと腋窩温が測れていない時が最も低い温度になるからです。そのため、「平熱」という評価をするためには、いつ、どのぐらいの頻度でどのように測定した体温を平熱とみなしているのかを確認する必要があると考えます。



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