2021年2月19-28日にWEB開催された
第22回日本病院総合診療医学会学術総会
の教育講演(指定講演)で「総合“心療”医に必要な脱力・痙攣の診方」を講演しておりました(事前録画だったので報告を忘れておりました。今年の分だけはさかのぼって順次報告致します)。
総合診療医の守備範囲は器質的疾患に限らない。むしろ臓器別の枠組みに囚われない診療スタイルからは、非器質的疾患の診察に対しても秀でているべきであると思う。
その一方で非器質的疾患の診察、特に身体所見については医学教育であまり扱われてこなかった。なお、演者が研修医の時に最も苦手としていた身体診察の1つが非器質的疾患に対する身体診察である。「目の前の人をとりあえず診られる医者になりたい」と考えていた演者にとって、これは死活問題とも思える課題であった。当時は非器質的疾患に対する書籍はほとんどなく、身体所見を動画で学ぶことも困難であり、論文を一つ一つ紐解いていたことを思い出す。
演者が指導医になってからは、非器質的疾患の診察が苦手な若手医師を何人もみてきた。彼らもまた診察の仕方を教わっておらず、分からないが故に面白いとも感じず、苦手意識が付くから避けるようになっているのである。なんと勿体ない話か。
代表的な非器質的疾患である転換性障害の診断率は歴史的にみてもCT、MRIなどの画像診断の発展とは無関係である。極論を言えば診察だけで診断を付けるべき疾患なのだ。総合診療医ならば診察で診断を付ける面白さを知れば病みつきになるのではないだろうか。
医学的にみても非器質的疾患を見抜く意義は大きい。例えば非てんかん性心因性痙攀発作を真のてんかん発作と見誤れば、不要な抗てんかん薬による副作用を患者に被らせることになる。非器質的疾患を身体診察で見抜くことは総合診療医にとって必須のスキルである。
この講演では非器質的な脱力・痙攣の身体所見について動画を用いながら解説を行う。一人でも多くの先生方に非器質的疾患の身体診察の面白さが伝われば幸いである。
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