今年も京都府医師会主催の講演会で講演させて頂きました。
300名近い先生方にお申込みを頂いたそうで、有難うございます。
今回はご質問を多く頂きました。その中から今回手根管症候群に関連して、円回内筋症候群はどうやって鑑別するのか?というご質問を取り上げて解説させて頂きます。
正中神経障害は以下の三つを考えます。
手根管症候群は最も多いので、これをベースにして説明します。まず、円回内筋症候群は円回内筋により前腕近位部で絞扼されるため、手を握り前腕回内を反復する運動で起こりやすいです。自転車競技などが有名です。障害される神経は比較的表面を走る感覚神経がメインなので運動障害はあまり起こりません。円回内筋症候群は手根管症候群と比較すると、感覚障害の分布も異なります。その理由は屈筋止帯で絞扼されるよりも近位部で、正中神経は手掌枝を枝分かれさせていることで説明できます。この解剖学的理由により、円回内筋症候群では手根管症候群とは異なり、母指球の感覚も障害されます。ただ、手根管症候群でも手掌のしびれ感を訴える方は多いので、あくまで他覚的な感覚障害で判断してください。
なお、皮膚(感覚神経が大事)がなく、筋肉(運動神経が大事)しかない深い場所(橈骨と尺骨の骨間)を走る前骨間神経が障害される前骨間神経症候群では運動神経障害だけが認められます(橈骨神経障害における後骨間神経症候群も同じ理由で、運動神経障害だけを認めますので、一緒に覚えてしまいましょう)。余談ですが、前骨間神経障害では長母指屈筋や深指屈筋障害で、涙のしずくサインを認めます。これは手根管よりも近位部の障害でないと説明できないので、前骨間神経障害を疑う重要なサインです。
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