透析ネタもう一つ。 透析後半に血圧低下し、生理食塩水を投与し復帰。 もう少しDWを下げたいのだが、なかなかDWを下げることができない経過のようです。
さて、そこで50%ブドウ糖を使ってみるという案です。
透析をすると血漿浸透圧はすぐに下がりますが、血管外・細胞内との浸透圧差異が生じ、浸透圧が高い他の部位へ自由水が移動することで、循環血漿量減少性の低血圧を惹起します。 (透析液を流さないで限外濾過により除水のみを行うECUM(extracorporeal ultrafiltration method)が血圧を下げにくいとされるのは、この浸透圧変化を最小限にするためです。)
また、血圧が下がりやすい人の場合は、透析の後半に除水することは困難となるので、均等除水ではなく、プログラム除水/計画除水という透析初期に除水を多めに行う方法を取ったりします。が、今回はそれでも除水不可能となってしまっています。
時として、透析後の帰宅途中に血圧が下がり救急に運ばれ、せっかく除水したのにやむなく生理食塩水の補液を行った既往もあります。
こういった状態では高張食塩水を補充する方法があります。 高張食塩水ならば生理食塩水と比べて少量の補充でも、血漿浸透圧をあげて循環血漿量減少を改善させることができます。 なかなか良い方法のように思えますが、血漿浸透圧が高くなれば口渇が出現しますので、次の透析で除水が大変になることは必至です。
透析開始時は高ナトリウム透析で開始し、細胞内などから除水し、最後に普段通りの透析に移行していくという方法(Sodium ramping)も魅力的です。徐々にNaを下げる方法と、途中で切り替える方法があります。
Am J Kidney Dis. 1997 May;29(5):669-77.
これらの方法は透析中の血圧は維持されやすく、
症候性の血圧低下は少なく、筋痙攣なども少ないのですが、
Na負荷であることには変わらず、口渇が増えてしまい、
結果として、体重が増えてしまいます。
追試験でも結果は同様でした Hong Kong Med J. 2006 Feb;12(1):10-4.
手間がかかる割にはイマイチな方法な気がします。
そこで、高張ブドウ糖を使って血管内に水分を引き戻す方法の登場です。 透析液を100mg/dLより200mg/dLとすることで血圧低下改善させ、代謝系への有意な影響も認めないとされます。 Int J Artif Organs. 2001 Dec;24(12):863-9.
高張ブドウ糖(20%)を3.3ml/kg/10分で投与した場合のデータでは、血管内ボリュームが増えます。 1.投与無、2.等張食塩水(0.9%)、3.高張食塩水(3%)、4.等張ブドウ糖(5%)、5.高張ブドウ糖(20%)、6.高張マンニトール(20%)
Nephrol Dial Transplant. 2002 Jul;17(7):1275-80.
血圧としては個人差が大きいですが、投与無群と比較して8mmHgほど差があるようです。(1回心拍出量(SV)も増えています)
透析間での体重増加は対照群で4.5±1.9kgでしたが、高張食塩水では5.1±2.1㎏と有意差はないものの体重増加みられましたが、高張ブドウ糖群では4.4±2.1kgと対照群と同等でした。 投与1時間後には投与無群と比べると60mg/dL血糖が上昇していますが、大きな問題にはならないでしょう。
まだデータも乏しく適切な投与量・投与速度は不明ですが、50%ブドウ糖なら60-80mlで上述の効果が期待できそうすので、特に低栄養な透析患者で透析中の低血圧が問題なら試す価値ありですね。