徳田安春先生の著書「病歴と身体所見の診断学: 検査なしでここまでわかる」で徳田安春先生と対談させて頂きました。その準備として前もって以下19項目の原稿を頂いており目を通しました。ちょうど九州までの出張だったので新幹線の中で読んだのですが、非常に面白く一気に通読してしまいました。
1 風邪症状-インフルエンザか? 2 脱水の診断-身体所見で否定できるか? 3 肝硬変の診断-身体所見でどこまでわかる? 4 呼吸困難の診断 その1-心不全?COPD?肺塞栓? 5 呼吸困難の診断 その2-心不全?COPD?肺塞栓? 6 呼吸困難の診断 その3-肺塞栓? 7 肺炎の診断-気管支炎か,肺炎か? 8 咽頭痛-Centor スコアを乗り越えろ! 9 胸痛-急性冠症候群? 大動脈解離? 10 上腹部痛-Murphy 徴候は陰性でも! 11 腹部膨満-腹水はあるか? 12 腰痛-感染? 腫瘍? あるいは椎間板ヘルニア? 13 下腿の腫脹-蜂窩織炎か? DVT か? 14 めまい-危険なめまいか? 15 手のしびれ-手根管症候群か? 16 手のふるえ-パーキンソン病か? 17 低アルブミン血症-低栄養か? 18 アルコール依存症か?-問題飲酒を見極める 19 原因不明の身体症状-うつ病か?
この書籍は、病歴と身体所見にこだわっていること、エビデンスに基づいていることだけではない点が非常に良かったです。まず日常診療ですぐ使えるCommon、Criticalな疾患で解説されていること。だから学生でも、どの科の先生でもとっつきやすい。そしてうまく説明はできませんが診断の流れが実に臨床的で無駄がないこと。臨床力の高い徳田先生ならではと関心します。
また尤度比アレルギーを無くす工夫がされています。尤度比ほど便利なものはないのに、尤度比ほど多くの人を診断学エビデンスから遠ざけたものはないように思います。本書では尤度比の簡単な解説に始まり、あとは症例にそくして繰り返し体感していきます。読み進めるにつれ、尤度比に対する抵抗感が消えていくことがわかります。ノモグラムで尤度比のイメージをつかむのも良いですね。これから医学を勉強していく医学部高学年、実臨床に出て自分で診断をつけなければならなくなり困っている初期研修医、なんとなくでやり過ごしてきてしまった後期研修医、今更だけど症候学や診断学を勉強しなおしたいという上級医まで幅広い層に支持される書籍だと思います。
私自身が今回の対談から学んだことはいくつかありますが、サパイラ先生、コンスタント先生といった偉人たちは芸術家でもあったことを知り驚きました。Science & Artと言ったりする身体所見の世界ではありますが、芸術観念が乏しい私にはいつまで経ってもArtの部分までは到達できません。いつかはその領域に達することができるように頑張りたいと思います。