慢性腎臓病(CKD)では貧血が電解質異常よりも頻度が高いです。おおよそGFR<30(G4)で腎性貧血が起こると書かれた教科書も見たことがありますが、糖尿病腎症では糸球体過剰ろ過のため、GFR<45(G3b)が貧血の起こる目安とも言われます。
一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会の報告によると2019年の慢性透析導入原疾患の42%が糖尿病になっています。
このためかは分かりませんが、最近31,082人のCKD患者に対して行われた貧血の調査((ESAを使用かHb<11g/dLで定義)によると、貧血はGFR<45(G3b)で高頻度と考えた方がよさそうです。
PLoS One . 2020 Jul 20;15(7):e0236132. PMID: 32687544
今回のテーマのCKDによっておこる電解質異常ですが、高K血症、代謝性アシドーシス(Na-Clから推測)、低Ca血症、高P血症が起こりやすい異常です。G4(GFR<30)で高頻度となります。
しかし、35,508人を対象に行われた調査によると、G3bやG4では低カルシウム血症よりも高カルシウム血症のほうが高頻度です。
PLoS One . 2020 Oct 15;15(10):e0240402. PMID: 33057377
CKDでは骨ミネラル代謝異常の治療として活性化ビタミンDを入れることが多いですが、個人的にはアルファカルシドールは原則0.5μg/日を超えて投与しないようにしているので(Ca,IP, iPTHみならが増量することはありますが)、まだ高Ca血症を起こしたことが、記憶の範囲ではありません。ただしアルファカルシドール1μgやエルデカルシトールの投与をデフォルトとするのは大変危険であると考えられます。高Ca血症はCKDを進行させる可能性があり注意したいものです。
また電解質異常の中ではリンが高い症例が最も多いことから、より早期にリン吸着薬を検討する(あるいは生活指導強化)必要もありそうです。ただし、このことは臨床医はみな分かっているはずなので、リン吸着薬の薬価、副作用、服用タイミングの制限の問題が大きいということなのかも知れません。
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