たまたまサーファーの病気いくつかがカンファレンスで問題となったので、サーファーで有名な病気についてまとめます。
・Surfer’s ear
冷水刺激による外耳道狭窄です。
これは症例発表ではCT画像のほうが見ることが多かったですが、外耳道所見は以下のようになります。
右が症例。左は正常。
貼り付け元 <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5696936/figure/F1/>
これは進化論的な議論がされており、水圧変化で鼓膜が損傷しないように進化したともされています。その根拠として水の中で生活している哺乳類であるイルカやクジラには耳の穴は開いておらず、下顎からの骨導で音を聴いています。また水の中で生活することが多いカバは耳の穴をふさぐことが出来ます。
Ann R Coll Surg Engl. 2017 Nov;99(8):594-601.
・翼状片(Surfer's eye)
サーファーは紫外線曝露をするため翼状片を起こしやすい。Surfer's eyeとも呼ばれます。
左が患者。右が治療後。
Case Rep Ophthalmol. 2014 Mar 25;5(1):98-103.
・後天性先端骨溶解症
サーファーのうち40%が3回以上のけがをしており、外傷部位は頭部/顔面と下肢特に足部に多い。
Injury. 2015 Jan;46(1):162-5.
J Sci Med Sport. 2004 Dec;7(4):429-37.
1症例のみの報告ですが、右の2番目と3番目のつま先にスポーツ関連の反復外傷の合併症として後天性先端骨溶解症を生じ、Surfer's toeと命名した報告があります。
J Am Podiatr Med Assoc. 2012 Mar-Apr;102(2):165-8.
・伏在神経麻痺(Surfer's neuropathy)
サーフィンで波を待って跨っている時のサーフボードによる圧迫による伏在神経麻痺があります。
N Engl J Med. 1987 Feb 26;316(9):555.
伏在神経は大腿内側を走行しますが、ハンター管で障害を受けることが多く、ハンター管症候群とも呼ばれます。
画像:https://koto-orthopaedics.com/disease-lower-body/hunters-syndrome/
波待ちのときにサーフボードでこの部位が圧迫されるんですね。
画像:https://nyugan-yobou.com/surfin_basic_technique/43/
症状は下図の部位の感覚障害だけで麻痺は伴いません。
画像:https://koto-orthopaedics.com/disease-lower-body/hunters-syndrome/
なお体重減少のためか総腓骨神経マヒも報告もありますが、これはサーファーに特徴的とは言えないでしょう。
J Child Neurol. 2000 Jun;15(6):420-1.
・Surfer's myelopathy
Adamkiewiczの閉塞による虚血と推測されています。
前脊髄動脈症候群=急速に進行する背部痛、対麻痺、膀胱障害で発症し、画像も同様です。
Neurosurgery. 2016 May;78(5):602-11.
脊椎過伸展がよくないと推測されています。多くは初回サーフィンの報告ですが、体操、yoga, チアリーディング、水泳でも報告があります。Surfer's myelopathy without surfingというらしい。
J Spinal Cord Med. 2019 Feb 15:1-6. doi: 10.1080/10790268.2019.1577057. [Epub ahead of print] PMID: 30767718
・気管支喘息発作
海水中のKanrenia breviaという海藻のtoxin(brevetoxin)のエアロゾル吸入で喘息が誘発されます。
Chest. 2007 Jan;131(1):187-94.
毒素のため症状が遷延(4日以上)することが特徴です。
Harmful Algae. 2011 Jan 1;10(2):138-143.
Kanrenia breviaとはいわゆる赤潮の原因となる麻痺性貝毒を産生する微細藻類で、メキシコ湾で毎年発生しますが、日本では問題となりません。海外でサーフィンする人は注意です。
・納豆アレルギー/遅発性アナフィラキシー
サーフィンをするとクラゲに刺されます。
当然クラゲを食べてアナフィラキシーになることもあります。
Eur J Dermatol. 2013 May-Jun;23(3):392-5.
しかし、納豆に含まれるポリガンマグルタミン酸(PGA)に感作することで起こる納豆アレルギーのほうが問題です。PGAは数十から数百万Daの高分子ポリマーでねばねば物質ですが、健康飲料、調味料、スポーツ飲料などにも含まれているそうです。特徴は高分子のため摂取から5-14時間遅れて起こることです。
マリンスポーツをしているとこの納豆アレルギーに278倍なりやすくなります。
特にサーフィンが高リスクです。
Allergol Int. 2018 Jul;67(3):341-346.
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