最近、検診でp53抗体陽性であるとのことで受診する人が増えています。癌検診とは癌を拾い上げることが目的ですから、感度の高い検査を行わなくてはなりません。そのためPSA以外の腫瘍マーカーを癌検診に用いることは一般的には推奨されていません。血清p53抗体はCEAやCA19-9などの既存の腫瘍マーカーよりも早期の陽性化が期待されてはいるようですが(Surg Today . 2012 Jan;42(2):164-8. PMID: 22075664)、それでもやはり感度は低いです。
様々な癌腫でp53抗体は陽性化するようですが、今回相談を受けたのは上部消化管癌と乳癌は否定的な方でしたので、大腸癌を心配されておられました。そこで大腸癌に対するp53抗体の診断特性を調べてみました。今年に27の論文をまとめたメタ解析が報告されていますが、多くが日本と中国からの報告でした。平均値やSDで定義されている論文は分かりにくいので割愛して、カットオフ値が明記してある論文だけを抜粋して、信頼区間や尤度比などを求めました。
図1:血清p53抗体による大腸癌の診断
p53抗体が1桁ならば可能性をさほど上げるものではないですが、年齢相当の検診は薦めるべきでしょう。2桁の場合はincidentalな発見であってもないがしろにしない方が良いでしょう。こうしてみると悪くない検査です。では、このデータを大腸癌検診として一般的に推奨される便潜血と比較してみましょう。
明らかに便潜血のほうが感度が高いですよね。最近では免疫法しか行われていませんので免疫法をみると特異度もp53抗体に負けていない(免疫法+ならばp53抗体が2桁に相当する)。さすが死亡率を下げるというデータがある便潜血検査は素晴らしい。ということで大腸癌の診断において便潜血と血清p53抗体のどちらがより優れた検査かは一目瞭然です。
自分はがん検診で腫瘍マーカーのオプションを選択することはありません。その後、結果に振り回されるのが嫌ですから。
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