Identifying optimal doses of heart failure medications in men compared with women: a prospective, observational, cohort study.
Lancet. 2019 Aug 22. pii: S0140-6736(19)31792-1.
心不全に対するACE阻害薬、ARB、β遮断薬はおおよそ半量が適量(β遮断薬は推奨用量の60%、ACE阻害薬/ARBは40%が至適)であり、効果はそのままで副作用リスクを30%減らすことができる。
BIOSTAT-CHF試験の事後解析で、左室駆出率<40%の患者のみが含まれ、試験開始から3ヵ月以内に死亡した患者は除外。主要評価項目は全死因死亡および心不全による入院までの期間の複合。アジアの11地域が参加した前向き観察研究であるASIAN-HF試験のデータで妥当性検証している。女性では上記の用量で最も予後良好。この性差は年齢や体表面積などの臨床的な共変量で補正しても残存したというもの。
男女で適正な用量が異なるという身近な例では飲酒量があり、 健康日本21(第2次) においては、 生活習慣病のリスクを高める飲酒量(純アルコール摂取量) について、 男性で1 日平均 40g 以上、女性 20g 以上と 定義していますし、 WHOのガイドライン(2000)でもアルコール関連問題リスク上昇の域値について、男性では1 日 40g を超える飲酒 女性では1 日 20g を超える飲酒としています。
薬剤ではゾルピデム(マイスリー®)の代謝が女性では緩徐であることから、FDAが男性で10㎎、女性で5㎎の用量設定に変更指示を2013/1/10に通知していることが有名です。この事から当院総合診療科では女性、特に高齢者にゾルピデム10㎎を処方することは原則ありません。
5年前(2014/9)にTEDでAlyson McGregorというWomen's healthで有名な方が、「Why medicine often has dangerous side effects for women」というタイトルで講演しており、男性を中心とした治験結果だけでその用量を女性にも適応することを警告していましたが、まさにその通りの結果です。なぜ男性を中心に治験がされてきたのか興味ある人は、以下のURLでTEDを見て頂くと良いかと思います。
論文著者の指摘する通り、今後は様々な薬剤の女性の至適用量を検証していく必要性があると思います。
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