総合診療 2019年 8月号
特集は ノーモア見逃し!日常の検査と画像に潜むピットフォール
=序文から抜粋=
さて、検査のピットフォールの1例として、ここでビタミンDについてみてみましょう。まず、意外にビタミンD欠乏が多いことがわかっています。日光曝露の少ない人でリスクが高くなります。これは、緯度の高い地域でよくみられますが、赤道直下地域でも室内での生活のみの人々ではリスクがあります。ビタミンD欠乏があるかどうかをみるには、血清中の25ヒドロキシビタミンD濃度を測定します。この濃度が体内のビタミンD貯蔵状態を反映するからです。専門家集団のコンセンサスによると、20ng/mL(50nmol/L)未満で欠乏とみなします1)。
しかし、人によりこの濃度が30~40ng/mL程度へ低下すると、副甲状腺ホルモン分泌が増加します。また、人により21~29ng/mLより高くなると、腸管からのCa吸収が増加します。このことから、30未満から20ng/mLまでは「相対的に欠乏」状態であると考えられています。
一方、サプリメントブームや骨粗鬆症治療のために、ビタミンD過剰内服ケースでの高カルシウム血症が最近増えています。その場合、血清中の25ヒドロキシビタミンD濃度が150ng/mLを超えているかで判断します。
高カルシウム血症の鑑別診断には、サルコイドーシスや結核などの肉芽腫性疾患や悪性リンパ腫も含まれます。活性化されたマクロファージでのビタミンD産生が増加するために、血清Ca値が上がります。このような疾患を疑った場合に測定すべきは、1.25ジヒドロキシビタミンD濃度です。42pmol/L以上が異常高値とみなされます。また1.25ジヒドロキシビタミンD濃度は、副甲状腺ホルモン、血清Ca濃度、血清P濃度、そしてfibroblast growth factorの影響も受け、微妙な範囲内に調節されています。これは体内の貯蔵状態を反映しないのです。
私は 「検尿・尿電解質 」のピットフォールを担当しました。今まで連載で扱ってきた内容を濃縮して書かせて頂きました。 他
には心筋バイオマーカー・D-dimer・BNP 、膠原病関連自己抗体 、炎症マーカー 、腫瘍マーカー 、血清蛋白質 、血清ビタミン濃度 、血糖関連の検査 が特集では取り上げています。
もう一つ私の連載です。
●胸腹痛をきたす“壁”を克服しよう|5
安易に肋間神経痛と診断するなかれ!
l 肋間神経痛は原因を追求すべきである
特発性肋間神経痛はPubMedでもGoogle Scholarでも検索されない。
急性腰痛症は原因がないので検査しない。一方、肋間神経痛はゴミ箱診断であり原因を探求すべし
l 椎体炎は初期のMRIでは診断が困難な事がある
だから化膿性脊椎炎は臨床診断で治療を開始せざるを得ないことはままある。
l 前屈位で誘発する季肋部痛はslipping rib症候群を考える
第8-10肋骨は固定性がわるいので、slipping rib症候群を起こしやすい。
前屈位で誘発する症例が多い。ただし第11-12肋骨は短いので後屈位で症状を誘発します。
診断にはHooking maneuverによる疼痛誘発が有用です。
昔の報告では若年者に多かったですが、最近は高齢者でとても多いように思います。脊椎後弯により下位の肋骨が上位の肋骨の下に滑り込むことで発症すると考えられています。
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