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尿中トリプシノーゲン2はリパーゼに勝てず

2020/11/1よりトリプシノーゲン2が保険収載されました。 急性膵炎を疑う医学的根拠について、診療報酬明細書の摘要欄に記載すること、と書かれているのでちょっと注意です。


一般的には急性膵炎の診断にはリパーゼを用います。

アミラーゼは唾液腺由来のアミラーゼもあるため特異性が低いばかりか、アルコール性膵炎では慢性的な要素が加わるためか、感度も低いためです。

トリプシン、エラスターゼ1、ホスホリパーゼA2 (膵PLA2)は膵特異性が高いとされますが、迅速に測定できないことから急性膵炎の診断に用いることは一般的にはしません。


しかし、リパーゼは院内で測定していない施設も多く、当院でも外注であり、膵炎の迅速診断に悩まされることがあります。そのような場合、 アミラーゼ高値の場合には膵由来のアミラーゼ高値は急性膵炎の診断に有用(感度100%、特異度75%)である(Clin Chem . 1989 Mar;35(3):417-21. PMID: 2465844)という報告などを根拠にp-アミラーゼを追加してなんとか対応しています。


そこで尿中トリプシノーゲン2の登場です。これは免疫クロマトグラフィー法の簡易キットで測れます。コロナやインフル迅速抗原検査と同じような感じです。なんと10分で結果がでるのでスクリーニング的に使いたくなります。


しかし、調べてみると、過剰な期待は禁物の検査です。

下図はCochrane Database Syst Rev . 2017 Apr 21;4(4):CD012010. からMetaDiscを用いて尤度比を計算したものです(項目は複数の報告があり、合計症例500例以上の項目のみを選別しました)。

これを見ると感度が低いことが致命的な弱点と思います。アミラーゼは定量検査ですからまだ域値を下げて対応できますが、トリプシノーゲン2は定性検査ですのでそのようなことはできません。少なくてもスクリーニングに用いるべき検査ではないですね。

検査方法が増えるのは良いことと思いますが、キットを購入しても使い切ることはなさそうなので、採用は見送りました。

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