結核性胸膜炎の診断において胸水中ADAのカットオフ値はいくつがよいのか、メタ解析を探してみたところ、ちょうどよい論文がありました。
PLoS One . 2019 Mar 26;14(3):e0213728.
感度と特異度は以下のように示されていましたが、残念ながら尤度比の記載がありません。また、ADAのカットオフ値が40なのか50なのかどちらよいのか知りたかったのですが、そこまでは分かりませんでした。
ということで、この論文の元データから解析しなおしてみました。感度・特異度・尤度比をグラフ化してみましたが、201行のデータがあったので壮大な感じです。
これをカットオフ値が区切りが良い論文を抜き出してSubgroup解析しました。
意外だったのは、カットオフ値を変えてもあまり診断特性が変化しないことです。
上記のグラフで著者名が空白になっているところがいくつかありますが、それは同じ著者がカットオフ値を変えた時の診断特性を報告していることを示しています。ほとんど著者名表記されていますので、ほとんどの論文は単一のカットオフ値でしか診断特性を報告していません。つまりは各々の研究の対象者にとって最も優れたカットオフ値を恣意的に選択している可能性が高いです。結核患者群は最低5名、対照群は最低6名という研究もありますので偏った値はでやすかったのでしょう。そのため、このようなメタ解析の結果になってしまったのだと思います。ただし残念ながら対象者≧100例、結核群≧10例、対照群≧10例のみを抽出すると該当論文数はかなり減ってしまい、解析してみてもあまりよい結果は得られませんでした。
最近、元データをSupplementとして提出するように求める出版社が多いですが、後々プール解析をすることまで考えれば、納得できる要求だと思いました。
複数のカットオフ値を報告している論文数は18報だけでしたが、もう少し信頼性が高くなるのではないかと考え、それらの論文だけを再度解析してみました。なかなか良い結果が得られました。この(個人的には)見慣れたグラデーションの入った表を見ると気分が落ち着きます。30-50U/Lが最適なカットオフ値と言えますが、rule in / outできるカットオフ値はやはりないのですね。
ADAが10-20よりも低くても否定はできないことに驚きました。漏出性胸水とのoverlap症例なのでしょうか。
結核性胸膜炎以外で胸水ADAが高値となる疾患は?という問いは丸太回診でありふれたネタですが、結核性胸膜炎と以下を合わせた4疾患はADA>100となることは覚えておきましょう。
Comments