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執筆者の写真Y

良い子はマネしてはいけないFFPの使い方

普段行っている診療とはまったく異なる話です。

しかし、ちょっと興味あり調べてみました。


 



大量出血でFFPを早く投与したい。でもいつまで待ってもFFPが溶解がされず、早くなんとかして!!という状況

添付文書では 30~37°C で溶解とされているが、この温度じゃないとダメ?という疑問。だって、それ以上の温度でダメなら、40℃の発熱患者は凝固障害起こしちゃうよ?


FFPをアツいお風呂でマッサージ?!

FFP溶解を35℃、37℃、42℃(最後は流水)で比較。35℃は30分かかるが42℃流水なら5分。Fib, FV, FVII, FVIIIなどに変化はない。

Anesth Analg. 2006 Oct;103(4):969-74.

温水振盪は37℃ではなく45℃でよいという報告もある。PT, APTT, Fib, VIIIは変わらない。必要な時間は17.0 ± 1.9分から9.2± 1.7分に短縮。

Am J Clin Pathol. 1988 Mar;89(3):381-4.

さらに温度をあげて56℃までなら影響は軽微。37℃と比較して溶かす時間は49.5±3.9分から28.3±4分となる。FIXが活性で76%(37℃なら97%)にまで低下するが、PT、APTT、Fib、FII、FV、FVII、VIII、FXIは変わらず。

Am J Clin Pathol. 1982 Aug;78(2):220-2.

高すぎる温度は凝固因子を壊す可能性があり、22℃と比較して45℃までは変わりないが60℃ではPTとAPTTに変わりはないものの、Fibは75%まで低下する。

Clin Appl Thromb Hemost. 2004 Apr;10(2):143-8.

大量出血ではPTやAPTTよりもFibが最初に動く指標だけにこの結果は看過できないと思います。 Vox Sang. 1998;74 Suppl 2:399-407.

ということで、温度は45℃まではOK。熱い江戸風呂ですね。人間はお風呂にはいれる。FFPもお風呂に入れる。またFFPを45℃になるまで温めているわけではなく、凍っている部分とよく攪拌させたら製剤自体は0℃ぐらいに保たれているはずですしね。あとは物理的な侵襲も凝固因子にも保存バッグにも悪影響ですが「愛護的に」凍っているFFPを砕くのが一番溶けるのを早くするでしょうね。



温めると言ったら「電子レンジ」でしょ

湯煎ならば30分かかるとことが、microwave oven(医療用です)なら5分と短縮できAPTT、Fib、VIII、X、XIなどに差異はない。

Transfusion. 1988 Nov-Dec;28(6):576-80.

他の報告でも凝固能低下しないという報告は複数あり。

Vox Sang. 2009 Jul;97(1):34-8.

Clin Lab. 2016;62(6):987-91.

Asian J Transfus Sci. 2017 Jul-Dec;11(2):147-150.

Transfusion. 2019 May;59(5):1857-1861.

便利そうですが、なんとなくこれはマネしにくいですねぇ・・・。時間見積りをあやまると調理になってしまいますので。食品用の電子レンジ+日本のFFP(保存バッグの違いもきになるので)で追試験して欲しいなあ・・・。




 


しまった! 勢いあまってFFP溶かし過ぎた、、、そんな時どうするか。

不要な医療は有害な医療。溶かしたから入れてしまえ、というのは乱暴な話。不要な血液製剤を使うということは、その分を誰かに献血してもらわなければならないということだし。

でも、一度溶かしたFFPは再冷凍はできない決まり。

融解後のFFPは2〜6℃で保存し、融解後24時間以内に使用すること。融解後24時間の保存により血液凝固第VIII因子の活性は約3〜4割低下するが、その他の凝固因子等の活性に大きな変化は認められないとされている(添付文書より)。

新鮮凍結血漿-LR「日赤」240 (新鮮凍結人血漿)の薬価は 18,244円。

うーん。運よく今日中に血液型がマッチする緊急FFP輸血の適応患者こないかな・・・。破棄するしかないか・・・というのが通常。


使わないFFPは再冷凍できるかも

融解後1-6℃で2-4時間放置。その後再冷凍して96時間以上経過してもAPTT、PT、FVに問題なし。ただしVIII因子は低下する。融解後1-6℃で24時間放置に再冷凍しても同様 ⇒24時間以内に再冷凍すればVIII因子以外は活性失わない

Transfusion. 1989 Sep;29(7):600-4.

再冷凍後の保存期間を延ばした追試験では、4℃で24時間保存した後に1週間再冷凍してもII、VII、IX、X、Fibに差異はない。VIII因子は調べられていない。

Transfusion. 2003 Jul;43(7):873-7.

Asian J Transfus Sci. 2013 Jan;7(1):11-5.

使わないFFPは24時間以内に再冷凍。一週間後までに再融解して使用すれば理論上は問題なし。ただしVIII因子補充は劣る(それでも5%程度だが)し、何より添付文書で認められていない使用方法ですので、一般診療で役立てるわけには行きませんが、災害・テロなど不測の事態が起こったら役立つかも?! 


最後に、これらの研究で用いられたのは日本の製剤ではない(保存バッグが異なる可能性があります)ことにも注意が必要です。

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