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魚介類アレルギー、アニサキスアレルギー

今回は魚を食べた時の紅斑の鑑別には何があるでしょうか?


  • 魚介類アレルギー

  • アニサキスアレルギー

  • ヒスタミン中毒

  • Food protein−induced enterocolitis syndrome ; FPIES

  • 毒素反応(シガテラ中毒、貝毒など)

  • 細菌/ウイルス/寄生虫感染{腸炎ビブリオ、ノロウイルス(牡蠣)、リステリア(魚介類加工品)、クドア(ヒラメ)など}

  • 食品色素や食品添加物によるアレルギー

今回は、魚介類アレルギーの概要と、その鑑別の中でも頻度が多いとされているアニサキスアレルギーについて説明します。


魚介類アレルギー

IgE介在型のアレルギー反応で、曝露直後または2時間以内にアレルギー症状が出現しますが、摂取後8時間まで遅れて反応しうることが報告されています。

感作やアレルギー反応は接触時に起こるのが一般的ですが、皮膚との接触や調理・加工時に発生するエアロゾル化したタンパク質を吸入することによっても起きる可能性があります。

他の多くの食物アレルギーと異なり、魚介類アレルギーは最大90%の患者において生涯に渡って持続します。

魚介類アレルギーの“魚介類”は、いわゆる魚類、甲殻類、軟体動物の3つに分類されます。

魚類アレルギーを起こした患者は、一般的に他の魚類に対してもアレルギー反応を示すことが多いので、魚類アレルギーと診断された場合には、他の魚類を避けるのが推奨されます。

魚類アレルギーを引き起こす主要な抗原として知られるパルブアルブミンは、ほとんどの魚類が持っています。パルブアルブミンは鶏肉にも含まれており、魚類アレルギーを持つ人が鶏肉アレルギーを発症する可能性もあります

一方、甲殻類アレルギーを起こした患者は、軟体動物、昆虫、ダニ、ゴキブリなどにもアレルギー反応を示す可能性があります

甲殻類の主要な抗原であるトロポミオシンは、摂取による曝露だけでなく、職業性に吸入や接触での曝露で感作されることがあります。



アニサキスについて

アニサキスは回虫目アニサキス科に属する線虫の一種です。

終宿主はクジラやアザラシなどの海洋哺乳類であり、中間宿主は、魚類(サバ、アジ、イワシ、サンマ等)やイカなどです。

これらの宿主を摂食することで、人間はアニサキスの偶発的な宿主となります。人間の体内では、アニサキスは通常3週間以内に免疫系によって死滅するか、嘔吐などで体外に排出されます。

アニサキスによる臨床病型として大部分を占めるものは、胃アニサキス症/腸アニサキス症の消化管アニサキス症です。

胃アニサキス症は、摂食後から数時間〜十数時間後に心窩部痛や嘔気嘔吐などの症状を来し、腸アニサキス症は、摂食後十数時間と比較的時間が経ってから、下腹部痛や腹膜炎症状をきたす事が多いです。


アニサキスアレルギー

アニサキスアレルギーとは、アニサキスの寄生した魚を摂食した後に、蕁麻疹やアナフィラキシー反応を呈する状態を指します。

1990年にKasuyaらが、サバ摂食後の蕁麻疹患者と健常人に対して、サバとアニサキスのスクラッチテストを行ったところ、蕁麻疹患者全例でアニサキス陽性かつサバ陰性であり、健常人では1人のみアニサキス陽性だったと報告しています。

この報告は、魚類アレルギーと考えられていたものが、実は大半はアニサキスアレルギーであった可能性を示唆しています。

このアニサキスアレルギーは、胃アレルギーアニサキス症(gastroallergic anisakiasis; GAA)という概念で表されることもあります。これは、生きたアニサキスが胃粘膜に侵入して症状を引き起こす、IgE介在型の全身性のアレルギー反応を指します。

アニサキスアレルギーでは、アレルギー反応のため腹痛・下痢などの消化器症状を伴う事があり(腹痛は消化管アニサキスより軽度)、一方で胃アニサキス症の10%に蕁麻疹を認めることが知られています。

GAAは、そのように両者を明確に区別することができない、もしくは密接に関連していると思われることからできた概念と思われます。

GAAでは加熱もしくは冷凍によって処理した魚を摂取した場合には、発生率が低いことから、生存したアニサキスであることが発症に関与していると考えられています。

また、GAAは即時型アレルギー反応であるので摂食後数分〜数時間以内に起こるはずですが、24時間以内なら起こしうることが報告されています。 これは、生きているアニサキスが数時間経過してから腸管粘膜に侵入し、その時点で初めてアレルゲンとして認識されるためであると考えられます。

接触や吸入によっても感作されるため、魚を扱う職業での、職業性喘息や接触性皮膚炎の原因となり得ます。


診断

病歴、鑑別疾患(魚類アレルギー・ヒスタミン中毒)の可能性が低い、特異的IgE検査でアニサキス陽性、プリックテストで魚類の抗体陰性などを踏まえて、総合的に診断します。

注意点としては、特異的IgE検査は不顕性感染で偽陽性となる場合があることです。また、ダニやゴキブリ、エビなどと交差反応性があり偽陽性となることもあります。

その他の検査としては、アニサキスアレルゲンコンポーネントとして15種類(Ani s 1~14、Tn C)が同定され、研究室レベルでの測定が行われています。しかしながらそれぞれのコンポーネントにどのような臨床的意義があるかが不明であるのが現状です。



治療・予防・予後

治療に関しては、即時型アレルギーに準ずる治療をします。

魚介類アレルギーを起こした患者には、原則、全ての魚介類を避けるのが最も安全です。

ただ上記のように、魚類と甲殻類では主要な抗原が異なるため、魚類でアレルギー反応があった人に甲殻類は制限しなくても良い(その逆も然り)という考え方があります。

しかしながら、レストランの調理場で両方の食材を扱っているなど、相互の汚染が考えられる場合は注意が必要です。

アニサキス症の予防方法としては、刺身が好きで生食がしたいという人には、冷凍処理 (−20℃での冷凍を少なくとも24時間 )をしてあるものを勧めるべきでしょう。

また、魚をよく食べるという方には、エピペン®を処方するのも有用と思われます。


重要ポイントのまとめ
  • 今まで大丈夫だった魚を食べた後に発症するアレルギーでは、アニサキスアレルギーを考える。

  • アニサキスアレルギーの鑑別には、魚類アレルギー、ヒスタミン中毒などがある。

  • 診断は、病歴と特異的IgEを用いて総合的に判断する。

  • アニサキスアレルギーでは適正に調理された魚は発症後も食べることができる可能性が高い。一方、魚類アレルギーであれば交差反応を考慮して魚類の摂取は避けるべきである。



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